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無声映画+講談=教化ツール 浄土宗「ライブシアター」の実力

 浄土宗の九州布教師有志会が教化ツールとして制作した「ライブシアター」が12日、関西に初上陸した。近畿地方教化センターと奈良教区が同日開催した「檀信徒大会・聞法会」のプログラムとして上演された。無声映画のような演出と講談風の迫力ある語り口が、檀信徒約800人を魅了。参加者からは地元での実施を望む声が相次いだ。

 「ライブシアター」は、スライド画像をスクリーンに映し出しながら、教師らがその場で台詞を述べて物語を進める仕組み。法然上人の遺跡に参拝できない檀信徒や、仏教に縁遠い人々への伝道を目的に制作を企画し、6〜7年前から「釈尊一代記」「法然上人一代記」「聖光上人一代記」の3作品を仕上げてきた。
 
 今回は「法然上人一代記」に聖光上人の行跡を組み込んだ特別編を上演。法然上人行状絵図などの絵伝や関連する史蹟の画像、有志会メンバーが描いたマンガなどを織り交ぜ、大きさや焦点の変化で動きを出した。
 
 映画さながらの音響と、場面に応じて照射するサーチライトも効果的に使った。講談風の口調やアニメのように親しみやすい言い回しなど、多様な表現で語られる台詞が檀信徒の心を揺さぶり、中には涙を流す人の姿も見られた。
 
 映像中のマンガ制作を担当する早田空善氏(佐賀教区光明寺)は「台詞の掛け合いを多くすることで、若い人にも面白く見てもらえるように工夫している。これまでに20回カスタマイズを繰り返してきた」と話していた。
 
 DVDの制作・販売を求める声も上がるが、ライブ感が薄れるため考えていないという。有志会メンバーの上田光俊氏(佐賀教区浄國寺)は「九州以外での上映は考えていなかった」。上演を見た稲岡亮彦滋賀教区議長は「一代記は書籍や法話でも接することができるが、映像を用いると感性に訴えられる。若い人の教化に役立つのではないか」と話していた。

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歳末助け合い托鉢 総本山園城寺

 総本山園城寺(三井寺)は16日、恒例の「歳末助け合い托鉢」を行った。僧侶や婦人会員ら約30人が観音堂を出発し、山伏行者講の法螺を響かせながら大津市内の長等商店街などで浄財を募った。
 
 戦後の生活困窮者救済を目的に開始し、今年が70回目の節目。布施の心や思いやりの心を社会に広げようと続けてきた。福家英明長吏(94)は「昨今は自分さえ良ければいいと考える人も多いようだが、他者を思う心は大切。助け合いの精神を広めていきたい」と話していた。

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みんな成長したね 比叡山幼稚園児ら「坐禅止観」

 比叡山幼稚園の年長組園児48人が11日、滋賀院門跡の内佛殿で延暦寺の修行「坐禅止観」を体験した。
 
 この日の大津市の最低気温は2.7度。〝比叡おろし〟が吹きすさぶ中、園児らは裸足で坐禅を組み、心静かなひとときを過ごした。
 
 同幼稚園では、集中力や我慢の心を養おうと「坐禅止観」を月に1度取り入れており、今回が卒園前の総仕上げとなった。武田功正園長は「年中組の頃と比べると、一人一人がとても成長した。坐禅止観で養った心を小学校でも生かしてほしい」と話していた。

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「納めの地蔵」鈴虫寺でも大根焚き

 鈴虫寺の愛称で親しまれる臨済宗単立の華厳寺(京都市西京区)は14、15日、お地蔵さまへの感謝と来年の無病息災を願う「納めの地蔵」を催し、大根焚きを行った。
 
 地域の人々が育てた大根1000本を使用し、5000食を準備。初日の2時間だけで1000食以上を振る舞った。桂紹寿住職は「今年は10回目の節目。おいしい大根で喜んでいただければ幸いです」と話した。
 
 今年で3回目の参加という石村晃一さん、美雪さん夫妻は「毎年の楽しみ。これで来年も元気に過ごすことができます」と笑顔を見せた。

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“駆け込み寺”が必要 子どもの貧困めぐり討論 浄土宗

 浄土宗人権センターは5日、浄土宗公開シンポジウム「シングル家庭から考える子どもの貧困」を大正大学で開催した。藤原千沙法政大学大原社会問題研究所教授、吉水岳彦ひとさじの会事務局長(光照院副住職)、小川有閑大正大学地域構想研究所研究員(蓮宝寺住職)がパネルディスカッションを行い、辛さや苦しみから逃れる場としての機能が寺院にあるとの見解で一致した。寺院消滅が危惧される中、現代社会で求められる寺院像は、昔と変わることのない〞駆け込み寺〞なのかもしれない。
 
 吉水氏は「ひとさじの会」を通じた路上生活者の支援を紹介。アパートで生活できるように斡旋しても、路上に戻る人が多いことを明かし、「他者との交流がない生活に、生きる意味を見出せないから路上に戻る。無縁のまま生き、無縁のまま死ぬという社会に意味があるのか」と語った。
 
 また、子ども食堂と学習支援を行う「こども極楽堂」でも、子どもたちが孤独な状態に置かれており、モデルとなる大人と接する機会を持てないと説明した。加えて、深夜に帰宅しない非行少年には、帰る家があっても帰れない孤独があるとし、「人が人として大切にされる社会でなければならない」と訴えた。
 
 自殺対策やグリーフケアの現場で活動する小川氏は「自死を考える人の多くが、幼少時に不適切な養育環境にあり、自分自身が生きる価値を稀薄に感じている」と指摘。自殺への偏見から、遺族が誰にも言えない死別経験の苦しさを感じているとも述べた。「何でも話せて、何でも受け入れられることが大切。寺はそうした余裕を持てる場所になりえる」と語った。
 
(詳細は文化時報12月14日号をご覧ください)
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瞑想・慈悲をケアに GRACE研究会が年次大会

 終末期のがん患者と向き合う医療者らが、仏教瞑想で心のトレーニングを積むGRACE(グレイス)について学ぶ「日本GRACE研究会」の第2回年次大会が7日、大阪市北区の関西大学梅田キャンパスで行われた。「GRACEの基本に立ち返り、コンパッションに触れる。」をテーマに、看護師や僧侶ら109人が参加し、慈悲の精神に基づいたケアをするためのグループワークに取り組んだ。

 GRACEは、英語の頭文字になっており、よりよいケアにつなげるための5つのステップを示している。米国の医療人類学者兼僧侶、ジョアン・ハリファックス老師が、医療者向けのプログラムとして2013年に開発した。
 
 この日の年次大会では、日本でGRACEの普及に取り組む村川治彦関西大学教授が講演。苦しみを和らげたい、少しでも取り除きたいという仏教的な「コンパッション」(慈悲、思いやり)がGRACEの重要な要素になっていると指摘した上で、「各ステップを繰り返し行うことで習慣にしていけば、よりマインドフルな状態でケアができる」と語った。
 
 続いて曹洞宗国際センター元所長で僧侶の藤田一照氏が、仏教瞑想に基づいた呼吸法を指導。「ストレスのかかるやりとりや状況の最中でも、いったん立ち止まって自分の注意を集めることが大切」と述べた。


 
 日蓮宗の中島海解法光寺住職(千葉県市原市)は「理不尽なことに向き合うには、相手にとっても自分にとっても、心を整えることが大切。GRACEでは、後悔や不安が駆け巡るのをひとまず止めることができると思う」と話していた。

仏教の本質 医療に根付くか

 日本GRACE研究会は、セルフケアに関心のある緩和ケア医や看護師、僧侶らが世話人となって昨年12月に設立された。代表の恒藤暁京都大学大学院教授や、浄土真宗本願寺派が手がける緩和ケア病棟「あそかビハーラ病院」の顧問を務める高宮有介昭和大学教授など、高名な医師たちが名を連ねている。
 
 背景にあるのが、医療者だけのケアには限界があるという発想だ。
 
 医療現場では、患者の死に直面する看護師らを中心に、十分にケアができなかったという無力感などで、燃え尽き症候群(バーンアウト)になる人が多いとされる。また、医師の長時間労働が問題となる中、仕事内容や職場環境の改善とともに、自分自身をケアする「セルフケア」の重要性も指摘されている。
 
 GRACEを開発したジョアン・ハリファックス老師は、仏教瞑想を基本としつつ、ヨガや分かち合いのグループワークなどを取り入れた。ケアを行う側が死とどう向き合い、いかに自分のこととして考えるかを探求す るためだった。
 
 そうして得られた、よりよいケアを提供するための成果を、医療者に納得して受け入れてもらうために、GRACEは神経科学や心理学のエビデンス(科学的根拠)を用いて理論武装している。
 
 これについて、曹洞僧侶の藤田一照氏は「経典を引く代わりに、仏教で言う方便として、西洋科学の知見を持ってきている」と指摘。「これまでの仏教とは似ても似つかないかもしれないが、GRACEには仏教の本質がある。医療現場に合うように、仏教のテンプレートを整えている」と説明する。

課題は日本語訳

 懸念もある。仏教色を前面に打ち出さないことが、かえって本質を伝わりにくくしていないか、という点だ。

 GRACEが重視している「コンパッション」には通常、慈悲や思いやりといった日本語訳が充てられる。苦悩や悲嘆に寄り添い、何が相手の役に立つかを感じる能力のことを指し、単なる共感ではないという。現状は適 切な訳語がないとして、あえて英語のままカタカナ表記で使われている。
 
 年次大会の参加者からはコンパッションについて、「さまざまな領域にまたがる面白い概念で、新鮮に感じる」という感想があった一方、「どう使うのかわからない」という戸惑いの声も上がった。
 
 ハリファックス老師は 昨年12月の第1回年次大会で来日した際、「死と向き合う人のための活動が、日本で展開されることに喜びを感じる」と話していた。医療現場に仏教の本質が真に根付くかどうかが注目される。(主筆 小野木康雄)

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世界平和は対話から 大津市仏教会が「成道会」

 大津市仏教会(会長=前阪良憲・天台真盛宗宗務総長)は9日、第52回成道会仏教徒大会を大津市で開いた。250人余が参加し、世界に平和をもたらすためには対話が重要であるとの認識を共有した。
 
 こうにん寺サンギーティ&響流サンガ(真宗大谷派響忍寺合唱団)が仏教讃歌などを唱和する奉賛式典を営み、杉谷義純天台宗妙法院門跡門主が「宗教から平和を考える」をテーマに記念講演。台風で被災した地域を支援するための募金活動を行い、6万4055円が集まった。大津市社会福祉協議会に寄託する。

 講演で杉谷門主は、宗教や民族の違いが争いを生むのではなく、正義と考える事柄が相反することが原因だと強調。「相手が納得しなければ、正義ではない。戦いは自己主張で始まる。対話によって世界の平和がもたらされる」と話した。「対話とは、意見を戦わせることではなく、相手の言い分を理解すること。そして相手に改めて考えてほしいと伝えることを、繰り返すこと」とも説いた。

(詳細は文化時報12月14日号をご覧ください)
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妙子会長が勇退表明 門首継承と同時期に 大谷婦人会

 真宗大谷派の大谷婦人会は9日に開いた委員協議会で、大谷暢顯門首の夫人である妙子会長が、来年に会長職を退く意向を明らかにした。勇退後の待遇や役職については今後、会で協議される。
 
 来年で設立130周年を迎える大谷婦人会は、寺族や門徒の聞法する場として発展し、全国に約290支部、1万2000人の会員を擁する。
 
 妙子会長は1996年9月に会長に就任し、2016年7月には大谷暢裕門首後継者の夫人である幸香さんが副会長に就任していた。暢顯門首が20年6月30日で退任し、暢裕門首後継者が7月1日に門首に就任することから、門首継承と時を同じくして会長職を退くこととなる。

(写真右が大谷妙子会長)
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仏教の味わいを看護師に 「西本願寺医師の会」が初の外部講座

 浄土真宗本願寺派に関係する医師らが集う「西本願寺医師の会」と、同派が京都府城陽市で手がける「ビハーラ総合施設」が初のタッグを組み、看護師や介護職の人たちに仏教の味わいを伝える講座を1日、本願寺津村別院で初めて開いた。那珂川病院(福岡市南区)の月江教昭緩和ケア部長、出口湛龍ビハーラ総合施設理事長、大嶋健三郎あそかビハーラ病院院長の3氏の講演と討議に、約120人が耳を傾けた。

 本願寺派真教寺副住職でもある月江氏は「この世の苦しみは四苦八苦に収まる。いかに解放されるかが、スピリチュアルペインの解放でもある」と仏教の基礎を解説。
 
 出口氏は自坊・稱名寺の仏教婦人会会長が亡くなった時の話などを紹介しながら、浄土真宗の法話で仏教の味わいを伝え、「『救う』という阿弥陀さまの願いに気づくことで生き方が変わるのでは」と話した。
 
 大嶋氏は、伝統仏教教団によるホスピスである「あそかビハーラ病院」が、僧侶が常駐する唯一の独立型緩和ケア病棟であることなどを紹介し、「死の臨床とは、人が人を思いやり、人が人を支える現場。人生をかけるに値する仕事だ」と、終末期医療の現場で働く意義を説いた。

■医療・介護現場の関心高く

 今回の講座は、「西本願寺医師の会」が外部に出向いて開いた。同会は2015年に設立され、会員数は約200人。これまで毎年1回、法話を聴聞する研修会を本山と築地本願寺で会員向けに開いてきたが、外に開かれた講座とすることで、仏教に関心を持つ医療者のニーズを掘り起こしたと言える。
 
 発案したのは講演者の1人で世話人でもある月江教昭氏だった。筑紫女学園大学(福岡県太宰府市)の「臨床・看護師(みまもりし)講座」の講師を務めたこともあり、「がん患者や高齢者に近い人たちの苦悩に寄り添いたい」と考えたという。

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「死んでる場合じゃないぞ」根本住職の講演に150人 花園大学

 自死防止相談活動に取り組む臨済宗妙心寺派の根本一徹(僧名・紹徹)大禅寺住職(岐阜県関市)が5日、 花園大学で「『死んでる場合じゃないぞ!』~消えたい気持ち。様々な生死観から見えてきたこと~」と題して講演した。

 2~5日の第33回花園大学人権週間の最終日にあたり、会場の無聖館ホールには聴講者約150人が訪れた。
 
 身近な人を自死で亡くした経験を持つ根本住職は、「生きるとは何か」を考え続け、2004年から自死防止相談活動を始めた。SNSを通して届く全国の希死念慮者からの相談に、メールだけでなく直接会いに行くなど、さまざまな形で応じてきた。

 根本住職は、「自分の身は自分で守る必要がある。そのためのセルフケアを学んでほしい」と話し、大禅 寺で実施している疑似葬儀のワークショップ「旅立ち」を紹介した。

 「旅立ち」は、病に侵され死にゆく自分を想像しながら行うワークショップ。大切な人や物、思い出などを書いたカードを12枚用意し、死が近づくたびに1~3枚ずつカードを捨てていく。長時間をかけることで、スマートフォンやSNSによる情報過多な状態から一度距離を置き、自らの内面と向き合うことができるという。「簡単な作業なので、家でやってもいいし、寺に来て体験してもいい」と根本住職は話す。
 
 令和元年版の自殺対策白書によると、国内の自殺者数は年間2万人を越え、10~30代の死因で最も高い割合を自殺が占めるなど、自死は深刻な社会問題となっている。
 
 根本住職はこれまでの 経験から、「死にたいと言う人はみんな孤独感を抱えており、未来や過去のことで思い悩んでいる」と指摘。その上で、「人生の楽しみはサプライズ。何が起きるかはわからないので、その時その時を大切に楽しめたらいい」と聴講者へ語りかけた。

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