比叡山延暦寺 根本中堂の楓が仏像で里帰り

比叡山延暦寺

 

根本中堂の楓が仏像で里帰り

常住寺復興プロジェクトが奉納

 

比叡山延暦寺の根本中堂大改修工事で伐採された〝霊木〟の楓が、仏像になって里帰りを果たした。岡山教区の葉上観行宗議会議員や、永宗幸信宗務所長が4日、延暦寺国宝殿に納め、小堀光實延暦寺執行らが、伝教大師の少年時代をかたどった「広野像」を迎えた。

比叡山宗教サミットの礎を築いた千日回峰行者・葉上照澄大阿闍梨を顕彰し、住職だった常住寺(岡山市中区)を復興するプロジェクトの一環。同プロジェクト有志は延暦寺から3本の楓を譲り受け、これまで叩き彫りの三千佛を祀る「三千佛堂」を常住寺境内へ建立したほか、寄進者らに贈る数珠なども制作してきた。

「広野像」は、高さ67㎝×幅32㎝×奥行25㎝で、「比叡山の木は、比叡山に帰るのが一番」と永宗所長らが発案し、松久宗琳佛所が刻んだ。伝教大師・最澄が仏門に入る前の10~11歳ごろの姿をかたどり、利発そうな表情や、奈良時代の子どもの服装などの再現にこだわった。葉上大阿闍梨と縁が深い、比叡山宗教サミットの精神を継承する「世界平和祈りの集い」当日に奉納した。

式典では、葉上議員が目録を手渡し、小堀執行や横山照泰根本中堂輪番らが除幕した。小堀執行は、「比叡山宗教サミットの平和への願いは、葉上大阿闍梨と山田恵諦座主猊下の思いと共に今も受け継がれている。〝広野像〟は、最澄さまが人々の幸せを求め、新しい仏教を開こうとした尊い思いの原点。新たな出発の日としたい」と喜んだ。

広野像は当面、温度管理が可能な国宝殿で保管し、いずれは根本中堂に安置する意向という。永宗所長は「もっと早く奉納するはずだったが、生木から始めたので時間がかかった。多くの人に手を合わせてもらいたい」と話している。