曹洞宗嶽林寺 群馬県みなかみ町で「指月会」を催す

曹洞宗嶽林寺

 

群馬県みなかみ町で「指月会」を催す

観月の会を縁に広がるつながり

 

月の名所として知られる群馬県みなかみ町の曹洞宗嶽林寺で、中秋の13日に「第11回指月会」が営まれた。しの笛と二胡の演奏や、キャンドルの明かりで幻想的に彩られた境内で、200人の参加者が秋の風情を楽しんだ。

嶽林寺のある地は月夜野と呼ばれ、平安中期の歌人・源順が東日本を巡行した際、三峰山から昇る月を見て「よき月よのかな」と詠んだことが由来と伝わっている。

10年前からみなかみ町観光協会が主催し、禅問答の公案の一つ「指月」にちなんで命名した観月の会も、町の風物詩として定着。当日はあいにくの曇り空で、月は雲間に隠れたままだったが、金子弘美さん(しの笛)と李英姿さん(二胡)が本堂で演奏し、「荒城の月」や「月の砂漠」など哀愁漂う楽曲に観衆は酔いしれた。

指月会には遠くは海外からも訪れ、今回はシンガポール大使夫妻や、外務省参事官、みなかみ町と友好都市協定を結ぶ茨城県取手市の藤井信吾市長、みなかみ町議会議員らも来賓として出席。演奏に感動した藤井市長により、地元の取手市で二人の演奏会が決定するなど、寺での催しがさまざまな縁をつないでいる。またシンガポール大使夫妻は数ヵ月前にみなかみ町を訪れて気に入り、秋に指月会という風流な催しがあると紹介された縁での来訪となった。

地元名産のリンゴやブドウも振る舞い、参加者に喜ばれたが、深津卓也みなかみ町観光協会代表理事は「最初の開催時に、住職とブドウを食べながらほのぼのと月を見ていたのを思い出し、秋を感じる地元のデザートを振る舞いたく思い、好評でした」と話している。

鈴木潔州住職は「最初はお寺の小さな行事として行っていたが、観光協会からもっと大きな行事として行いましょうと言ってもらい、町の方の応援をいただき、いつしか盛大な会となった。世界中が騒々しいことになっているが、和合という言葉の通り、日本人は気持ちを一つに合わせる素晴らしい特質を持っている。毎回、月が出ればいいなと天気を心配しているが、参加される多くの方の顔を見ていると、参加者が大きな輪となり、月が出ても出なくても、よい行事になったなと思う。これこそが福徳円満、和合であり、我々の基本もそこにあるとつくづく思う」と語っている。