真宗大谷派 富山からハンセン病問題を考える

真宗大谷派

 

富山からハンセン病問題を考える

回復者家族の声にも耳を傾け

 

真宗大谷派は9月13、14日、第11回ハンセン病問題全国交流集会を富山県総合福祉会館で開催し、約370人が集まった。ハンセン病家族訴訟に対し、熊本地裁が6月に原告勝訴判決を出し、国が控訴断念を発表し、総理が原告に直接謝罪するという大きな動きの中での開催となった。

富山にはハンセン病療養所はないが、イタイイタイ病の公害被害があった。今回はハンセン病問題に加えて、「病そのものとは別の苦しみ」のサブテーマを掲げ、回復者やその家族の声に耳を傾けた。

黒坂愛衣氏(東北学院大学准教授)による基調講演の他に、両日ともショートレクチャー「声に聴く」の時間を設け、ハンセン病家族訴訟原告や、イタイイタイ病被害者家族など6人の声を届けた。富山県からは祖母が病を発症し、24時間痛みを伴う生活を間近で見続けた被害者家族も来場。「祖母は意識が薄れていく中でも『痛い』と大きな声を上げて亡くなっていった。痛みから解放されたのが死という、あまりにもはかない祖母の生涯でした」と振り返り、「このような惨禍を二度と繰り返さないで」と話した。

大谷派では1996年の「らい予防法」の廃止とともに、「ハンセン病に関わる謝罪声明」を発表しており、最終日には「二度と同じ過ちを繰り返さないための私から始まる歩みを進めていく」と富山宣言を採択した。

同派解放運動推進本部の山内小夜子本部委員は「イタイイタイ病を発症した9割以上が女性だったこともあり、原因がわかるまでは偏見の目で見られた歴史や、差別の苦しみもあった。ハンセン病患者の家族の話と、イタイイタイ病被害者家族の話とが重なり、強く印象に残る大会となった」と話している。

集会に参加した宗議会同朋社会推進委員会の勅使忍委員長(愛知県・法善寺)は「開催までの約1年かけて、富山・高岡教区の方々が研修や講座を地元で開催し、ハンセン病の学びとともに、地元のイタイイタイ病について改めて真摯に学ばれた姿勢に敬意を表したい。年々、回復者の参加が減っている状況を見ると、もっと早くからこのような集会を行っていればという後悔の念も抱いた」と話し、同委員会の金子光洋委員(新潟県・最賢寺)は「当事者だけでなく、家族が受けてきた差別や、家族自身が親族である患者を差別してきたことへの傷みを聞かせていただき、切実な問題として考えさせられる機会になった」と感想を話す。

大谷派宗議会の新羅興正議長(山形県・緑陰寺)も「ハンセン病の学びを富山で開催することにより、地元のイタイイタイ病や被害の歴史を、もう一度浮かび上がらせた。このような取り組みは、大谷派だからこそできる取り組みだと思うと同時に、改めて差別という人の尊厳を奪った歴史について学び続けなければならないとの思いを深くした」と語っている。