台風禍の山林が危ない 神仏の力が弱まり?

台風禍の山林が危ない

神仏の力が弱まり?

 

日蓮宗霊場である能勢妙見山の山頂近くに自生している天然記念物のブナ林を守るため市民有志が結成している「能勢妙見山ブナ守の会」(事務局=能勢妙見山内)が4日、兵庫県川西市内で公開シンポを開いた。緑化や治山を指導している“森と山のスペシャリスト”髙田研一森林再生センター理事が現代日本の危機について言及した。

髙田理事は冒頭、「大変な事態が起きつつある」と語った。3年続いた台風禍で山の木々がなぎ倒され、根元が露出したままになっており、「温暖化によって今後も大雨が降れば、山の土が洗い流され、爆発的に土砂崩れが続出するだろう。山裾に建てられた新興住宅に住む人たちが、安心安全に暮らすことができない厳しい時代に入った」と危惧した。

その理由について、国が1929年から進めている山林植林計画により、土地との適合を考えず、均一にスギやヒノキを山に植えた結果、山崩れの危険性が高まっていると語った。

京都の鞍馬山には“川床”を楽しむ貴船という集落があるが、古絵図ではほんの一部の平地に家が密集し、それ以外の場所に家はなかった。集落の上には神社や仏閣が村を守るように並び、その境内にはケヤキやモミジ、ヤマザクラなどが植えられていた。また、山の木を切るときも、今のような皆伐ではなく、神さまからのいただき物として一部の大きな木だけを切って、その他の木々は守り、「山崩れを防ぐための配置の妙があったのが、日本の山林だった」と話す。

しかし、高度成長期に入り、経済至上主義がまん延。切り出しコストが高いからと山林は放置され、シカが増殖。その食害は毒性のある花も食するほどで、いずれは山林を構成するあらゆる幼木を食べ尽くしてしまうという。さらに、その危機に追い打ちをかけているのが、昨今の台風禍だ。

髙田理事は、修験の聖地として崇敬を集める大峰山・弥山の写真を示した。弥山は麓の天河神社の神体山だが、シカの食害により山頂の木々が枯れ、山が死んだような風貌になっている。また、天河神社の境内も近年の大雨によって土砂で埋まり、荒れてしまっている。

「自然の恵みによって生かされている人間が、感謝と畏れを忘れたことが原因。弘法大師は真言を唱えながら山々を歩かれた。そこに、日本人の精神軸となるものがあるはず」と宗教者の奮起を促した。