滋賀医大で「医の倫理」 宗教者が医学生らと討議

滋賀医大で「医の倫理」

宗教者が医学生らと討議

 

滋賀医科大学で、医学生や看護学生と外部の宗教者らが臨床現場の事例について語り合う「医の倫理」合同講義が今年も11日に開かれた。浄土真宗本願寺派僧侶の長倉伯博非常勤講師が提示した四つの事例をもとに、学生約180人と外部参加者約50人が24の班ごとに討議。緩和医療の現場で死と向き合うための心構えなどを学んだ。

本願寺派僧侶の早島理名誉教授が国立大学では先駆的な取り組みとして約15年前に開始し、現在は室寺義仁教授が引き継ぐ。医学科4年生の必須科目で、今年から看護学科1年生の必須科目にも加わった。早島名誉教授は「人は必ず死ぬ。医療が何もできなくなったとき、医療者として何ができるのかを外部の人たちと議論してほしい」と講義の意味を話す。

長倉講師は、「医療者が『患者さんに人生を味わうチャンスを作るのが仕事』という立場に立てば“医療の敗北”は無くなる。『生まれてきてよかった』と言ってもらえるにはどうするか」と呼び掛け、肺がんだった63歳の男性が、研究者として米国にいる一人息子から「お父さんの息子でよかった」と送ってきたメールに激怒した事例などを紹介した。

班ごとの討議は医学生と看護学生が議論を進め、外部参加者がアドバイスする形で進めた。肺がん男性の事例を討議した19班の学生らは「何もできなくなった役割の喪失が原因では」「死を突き付けられたことや、帰ってきてほしいという気持ちがあった」などの意見を交わした。また「若い世代は喪失感のイメージが湧かない」などの新たなテーマもあった。進行役を務めた医学科の堀川裕明さんは「外部の人たちと話すと、学生だけでは広がらない視点が出てくる」と語っていた。

今年の外部参加者は宗教者や医療関係者、記者などで、木邊顯慈真宗木辺派門主ら全国の僧侶や、龍谷大学大学院実践真宗学研究科の臨床宗教師研修受講者、本願寺派のビハーラ僧養成研修会の受講者も参加した。

両研修を同時に受講中の実践真宗学研究科2年生の山本顕生さんは「学生らは『生』に対していろんな意見を持つが、『死』にはあまり触れていないと感じ、死生観を持つことの大切さを話した。両研修では答えはないことを学んでいる。改めて『何で?』という問いを大切にしたいと考えた」と話していた。