家庭巻き込み情操教育 浄土宗宗門校にみる伝道のヒント

 浄土宗関連の学校や幼稚園が、日常生活に仏教行事を取り入れることで、子どもたちに宗教心を芽生えさせる取り組みを進めている。仏教離れや寺院離れが叫ばれる現代社会では、家庭の中で宗教に触れる機会が少ないのが実情。菩提寺に対するニーズで最も低いのが「教えについての情報提供」という調査結果すらある中で、伝道のヒントは保護者を巻き込んだ情操教育にあると言えそうだ。(大橋学修)

 全日本仏教会と大和証券が2019年2~3月に行った調査(回答者数7412)では、「菩提寺から提供を希望する情報」のうち最も多かったのは「年忌法要のお知らせ」の40.9%。次いで「彼岸法要やお盆法要等の案内」の33.2%となり、「教えについての情報提供」は15.9%と最も低い結果にとどまった。
 
 家庭に仏教が届いていない状況にあって、浄土宗の宗門校はどのような取り組みをしているのか。

■音楽法要の力

 東海中学校では、音楽や宗教の授業で仏教讃歌 や宗歌を学び、全校生徒 千人余が参加する音楽法要を毎年、総本山知恩院で営んでいる。

 また、創立記念日に合わせたOBの物故者追悼法要など、少なくとも年3回は音楽法要を開催。日々の行事でも仏教精神に基づいた講話を行い、念仏を10回唱える「十念」を日常的に行っている。
 
 佐藤泰年東海中・高校長は「音楽法要や日々の生活の中で宗教心を学び、それぞれの子どもたちが自分の生き方を振り返る機会になればと考えている」と語る。生徒た ちは初めのうち、仏教行 事への参加について〝や らされている感〟がある というが、卒業後の一番 の思い出は知恩院での音 楽法要、と答える生徒が 多いという。
 
 音楽法要見学のため、個人的に知恩院を参拝する保護者もいる。希望者が増えてきたため、学校側は中学2年の保護者を対象とした団体参拝を、音楽法要とは別に企画するまでになった。

■法話を聴聞

 華頂幼稚園では、成道会などの仏教行事を行い、儀礼のたびに仏法僧をテーマとした話を園児たちに伝えている。また、希望する保護者らが園児を連れてきて交流する「きらきらサタデー」を隔週土曜日に開催し、親子で共に学ぶ機会を設けている。
 
 園児と保護者が参加する七五三の知恩院参拝を毎年行っていたが、今年は希望する保護者のみを対象とした参拝を企画した。

 法然上人御堂で日中法要に参列した後、重要文化財の大方丈で法話を聞き、華頂弁当の接待を受けて、諸堂参拝を行った。
 
 保護者団体「あゆみ会」の西山真妃会長は、神社仏閣に対する関心はあったものの、知恩院の御影堂を参拝するのは初めて。今回は会長を引き受けたのをきっかけに参加した。「法話を聞いたことが、自分を見直す機会になった。この場に来たからこそできた経験だと思う」と話していた。
 
 東海中学校と華頂幼稚園は、いずれも日常生活の中に仏教行事を取り込み、仏教精神に基づく教育を進めている。さらには子どもたちを通じた保護者との交流で、家庭に仏教への関心を持たせ、参拝や法話の聴聞といった宗教的な行動につながっている。ここからいかに宗教心を芽生えさせるかが、現代の僧侶に求められている。

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