「死んでる場合じゃないぞ」根本住職の講演に150人 花園大学

 自死防止相談活動に取り組む臨済宗妙心寺派の根本一徹(僧名・紹徹)大禅寺住職(岐阜県関市)が5日、 花園大学で「『死んでる場合じゃないぞ!』~消えたい気持ち。様々な生死観から見えてきたこと~」と題して講演した。

 2~5日の第33回花園大学人権週間の最終日にあたり、会場の無聖館ホールには聴講者約150人が訪れた。
 
 身近な人を自死で亡くした経験を持つ根本住職は、「生きるとは何か」を考え続け、2004年から自死防止相談活動を始めた。SNSを通して届く全国の希死念慮者からの相談に、メールだけでなく直接会いに行くなど、さまざまな形で応じてきた。

 根本住職は、「自分の身は自分で守る必要がある。そのためのセルフケアを学んでほしい」と話し、大禅 寺で実施している疑似葬儀のワークショップ「旅立ち」を紹介した。

 「旅立ち」は、病に侵され死にゆく自分を想像しながら行うワークショップ。大切な人や物、思い出などを書いたカードを12枚用意し、死が近づくたびに1~3枚ずつカードを捨てていく。長時間をかけることで、スマートフォンやSNSによる情報過多な状態から一度距離を置き、自らの内面と向き合うことができるという。「簡単な作業なので、家でやってもいいし、寺に来て体験してもいい」と根本住職は話す。
 
 令和元年版の自殺対策白書によると、国内の自殺者数は年間2万人を越え、10~30代の死因で最も高い割合を自殺が占めるなど、自死は深刻な社会問題となっている。
 
 根本住職はこれまでの 経験から、「死にたいと言う人はみんな孤独感を抱えており、未来や過去のことで思い悩んでいる」と指摘。その上で、「人生の楽しみはサプライズ。何が起きるかはわからないので、その時その時を大切に楽しめたらいい」と聴講者へ語りかけた。

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