G20諸宗教フォーラム 少子高齢化問題を考える

G20諸宗教フォーラム

 

少子高齢化問題を考える

高齢者から社会を明るく

 

既報の「G20諸宗教フォーラム2019京都」では、八つのセッションが行われた。12日に開催されたセッション7のテーマは「少子高齢化問題」。釈徹宗相愛大学教授(本願寺派如来寺住職)がモデレーターを、前野直樹日本ムスリム協会理事、國富敬二WCRP日本委員会事務局長、ヒーサー・フミコ・ハインバック氏(コロンビア大学学士)がパネリストを務めた。

少子高齢化は先進国共通の課題で、わけても日本は現在65歳以上が3500万人を、80歳以上が1000万人を超え、超高齢化社会に突入している。それにより医療費の増加や、年金の不足など、多くの問題が表出している。

立正佼成会出身の國富氏は、医学の発展による長寿を喜ばず、高齢化を否定的に語る現代社会に対する問題を提起。

「高齢者が生き生きとした社会が実現して初めて、若者が未来に希望を見いだすことのできる社会が実現する」と説いた。付言して、「世界は自国ファースト、弱肉強食から、分かち合う世界へと転換しなければいけない。貧困や暴力に晒されるのは高齢者や弱者。弱者のために挑戦するのが宗教者だ」と語った。

前野氏は、ムスリムがなぜ少子高齢化と無縁なのかを話した。ムスリムは教えの中で高齢者や子どもたちの価値について触れており、宗教が持つ普遍的な教えを生活レベルで実践している社会では、日本のように社会問題として顕在化しないと指摘した。

ハインバック氏はアメリカの少子高齢化問題について語った。白人社会では少子高齢化が進行しているが、それを上回る移民が押し寄せ、経済格差が社会的な問題となっている。また途上国では逆に人口が増えて食糧難などの問題が起こっていると述べ、先進国と途上国の比較を示した。

パネリスト同士の質疑応答では参加者からも意見が出され、少子高齢化問題は国際的なレベルで移民や格差、貧困と関わりが深いことが明らかとなった。少子高齢化社会の経済的負担については、みんなで分かち合うという意識改革の重要性が挙げられた。

進行役を務めた釈氏は「身近なところでは子育て支援や高齢者の居場所づくりなど、弱者に寄り添うのは宗教者の使命。今回のセッションは、グローバルな視点や、多様な意見が出て興味深かった」と語っていた。