浄土宗大本山百萬遍知恩寺(京都市左京区)が所蔵し、法然上人の裸像としては唯一現存するといわれる「張り子の御影」について、東京国立博物館が11日、調査を始めた。江戸期以前に制作された法然上人像が少ない中、遅くとも室町期の作とみられることが判明。文化財級の尊像と認定される可能性があるという。今後、CTスキャナーを使って内部調査などを行い、正確な年代を特定する。
「張り子の御影」は、百萬遍知恩寺を実質的に開いた法然上人の門弟、勢観房源智上人(1183~1238)が造ったと伝わる。高さ47.9㌢、幅32.7㌢(膝部分)の座像で、頭部は高さ15.1㌢、幅11.9㌢。裸体は細部に至るまで精密に表現されており、正絹の黒衣(法衣)を着せて法主棟の内仏として奉安されている。学識者による調査は今回が初めて。
調査に当たった東京国立博物館の浅見龍介学芸企画部企画課長によると、造形から鎌倉―室町期に制作された可能性が高いという。現存する法然上人像はこれまで、鎌倉期に制作された當麻寺(奈良県葛城市)のものが最も古いとされている。
また、「張り子の御影」の名の通り、これまでは麻布に漆を塗って造る「脱活乾漆(だっかつかんしつ)」の技法が用いられていると考えられていたが、調査では木造の可能性があることも分かった。
着せられていた黒衣にも特徴があり、仏像用に細工されたものではなく、人が着る衣と同じ縫製が行われていた。白衣や襦袢(じゅばん)、ふんどしまで着せていることが判明した。
調査の様子を傍らで見守った福原隆善法主は「生きておられる法然上人のありのままの姿を表したのだろう。お顔から、若い頃の姿のように見える。比叡山を下りて間もない頃のように感じる」と語った。
(文化時報2020年12月16日号掲載前の速報)
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