月別アーカイブ: 2019年4月

劇団希望舞台「釈迦内柩唄」 東本願寺で17年ぶりに公演

劇団希望舞台「釈迦内柩唄」

 

東本願寺で17年ぶりに公演

火葬場を家業とする家族を描いた物語

 

劇団希望舞台が5月に「釈迦内柩唄」を東本願寺で17年ぶりに公演する。来月の公演を控え、主演の有馬理恵さん(劇団俳優座所属)と、希望舞台の荻原ゆかりさんが4月15日に東本願寺を表敬訪問した。(写真は有馬さん(左)と萩原さん)

「釈迦内柩唄」は作家・水上勉氏が花岡事件をモチーフに、火葬場を家業とする家族を描いた作品。幼少時から火葬や死体の埋葬に関心を持った水上氏の仏教体験が根底に流れ、多くの寺院や各地の仏教会でも上演されている。

1997年に始まった「釈迦内柩唄」の公演は昨年で500ステージを終えた。有馬さんは、主役のふじ子を最も多く演じ、「私の人生を変えたライフワークであり、人生の教科書ともいえる作品」と語る。

有馬さんは、同和地域と呼ばれた地で育った。高校1年生の時、母方の祖母が余命わずかとの連絡があり、生まれて初めて祖父母に会いに行く。「どんなに歓迎されるだろうか」と胸を躍らせて訪ねたが、「それ以上は入ってくれるな」と玄関の扉を閉められた。

差別に対する怒りで苦しみ、高校2年生の期末テストの期間中、演劇への造詣が深い父親から「テストより大切なものがある」と観劇に誘われた。それが浅利香津代さん主演の「釈迦内柩唄」だった。

有馬さんは「演劇が始まって35分、『同棲までしたが、火葬場の娘だと分かって、彼も逃げた』とふじ子が舞台上で泣き叫ぶ。そのシーンを客席で見ていた私は主人公よりも泣いて、そのまま気を失ってしまいました。我に返ると、舞台上で片付けが始まっていて、その後、学校を1週間も休むほどでした。自分の境遇と、ふじ子の思いとが、多感だったからこそ重なったのだと思います」と当時を振り返る。

「この作品に出会えていなかったら、自分を悲劇のヒロインに追いやったまま、人を信じることができなかったかもしれません」と有馬さんは話し、彼女たちのように力強く生きていきたいと女優を志したという。作品に出会って10年後、希望舞台の由井數代表と出会い、自ら主演することとなる。「人々の心に響く作品が私にできるだろうかと葛藤しながら、火葬場の臭い、煙を、観客の皆さんも一緒に感じてもらえることを信じて今も演じています」と。

荻原さんは20年以上前の初演を振り返り、「私自身、演劇は希望を語ることだと考えていて、火葬場が舞台の作品から希望が生まれるのかと当初は疑問でした。しかし初演後、私の心配をよそに、観客が主人公と一緒に泣いたり笑ったりし、作品を受け入れてくれる姿を見て上演してよかったと思えました」と語る。

東本願寺での公演について有馬さんは、「私たちが演じる今回の演劇と同じようなテーマで、僧侶の方々も日々布教されていると思います。私も舞台を通じて、人の優しさや命の尊厳を伝えていきたいです」と抱負を語っている。

上演は、しんらん交流館で5月10日午後6時半から、11日午後2時から。前売り3000円(当日3500円)。予約受付は、しんらん交流館で。

総本山長谷寺 ぼたんまつり始まる

総本山長谷寺

 

ぼたんまつり始まる

初咲きを十一面観世音菩薩に献じ

 

総本山長谷寺はぼたんまつり開白の20日、本尊十一面観世音菩薩に初咲きのぼたんを献ずる〝ぼたん献花祭〟を営んだ。

稚児行列を先頭に、大導師の田代弘興化主と総本山役職員らが門前町から参道を経て本堂まで華やかなお練りを繰り広げた。外舞台で稚児加持を行い健全な成長を祈念し、本尊十一面観世音菩薩宝前で法要を勤めた。

西国三十三所巡礼の白衣が目立つ山内。ぼたんの花がほころびはじめ、満開を迎える連休には、全国から参加した布教師らの特別法話が始まり、花と名調子に招かれるように毎年多くの参拝者が訪れる。

日蓮宗 30年前から過疎化の問題を指摘

日蓮宗

 

30年前から過疎化の問題を指摘

組織的に行動できるのか?

 

平成の時代、宗教界は過疎化という大きな課題に直面した。バブル景気に沸く中、平成元年にいち早く人口減少社会の到来を予測し、警鐘を鳴らしたのが日蓮宗だった。

日蓮宗現代宗教研究所は平成元(1989)年に『過疎地寺院調査報告―ここまで来ている過疎地寺院 あなたは知っていますか?』を発行した。表紙をめくると、「寺は崩壊するか」との見出しが目に入る。「世の中の変化に寺はついていけなかったのか 寺ではなく僧侶に問題があったのか 何が、誰がこうさせたいのか我々は知りたい 知らなければ、これからの日蓮宗の未来を語ることはできないと考えるからである」とあり、当時にすれば、かなり刺激的な表現だ。

現宗研は数年前から、北海道、秋田県、新潟県、千葉県、山梨県、福井県、京都府、島根県の9ヵ所で調査を行っていた。同書は、過疎地の実態調査から見えてきた問題を提起するために発行されたが、この警鐘が生かされたとは言い難く、寺院の状況は、調査時の予測とほぼ同じように推移している。

福井県の今庄町は、かつて北国街道、北陸街道の交差地、今庄宿として繁栄した。昭和35(1960)年ごろから過疎化が進み始め、現在は合併して南越前町になった。町は今後も人口減少が進むと予測し、それに沿った長期総合計画を立てるとしている。

同町には5ヵ寺がある。JR北陸線今庄駅から徒歩4分の善勝寺は、尼僧の逝去後から30年以上、無住寺院となっている。最大10軒あった檀家は、平成元年には8軒、現在は5軒になった。

調査報告書には立派な伽藍の写真が掲載されているが、今は風雪に耐えるためか、全面が鋼板で覆われ、入り口しか見えない。(写真)法華宗から日蓮宗に転派したため法類組織が機能せず、代務住職も立てられないという。

他の4ヵ寺は調査時には住職が常住していたが、「後継者なし」と回答。住職の逝去後、3ヵ寺は代務住職が法務を担っている。1ヵ寺のみ10年間の無住職状態を経て、他の地域から若い僧侶が入寺した。

 30年前の調査報告では、さまざまな社会変動が檀家制度を揺るがし寺院活動を弱め、さらに農村地区に多く認められる寺院と檀家との因習的な拘束性も後継者難の一因となっていると推察。そして「福井県の10年後、20年後を考えるとき、さらに住職不在寺院が増大することは確実と思われ、それに伴い県内における宗門の伝道活動は、憂慮される事態に陥ると考えられる。このような事態に早急に対応しなければならないことは、福井県だけに限らず、宗門全体の課題と言える」と警鐘を鳴らした。

この傾向は、日蓮宗に限ったことではない。福井県に複数の本山と多くの寺院がある真宗系教団も「門信徒が少なくなって、住職がいなくなる事態に至ったとき、残る門信徒がどのように信仰を護っていけばいいのかのルールさえも定まっていない」と危機感を募らせる。人口減少という差し迫った危機が近付いていることを、過疎地寺院は示している。

大谷大学 春季公開講演会

大谷大学

 

春季公開講演会

 

大谷大学は、大谷学会春季公開講演会を5月29日に講堂で開催する。

講師は、大乗仏教は人間に何を教えるのかを研究の中心にしている織田顕祐大谷大学教授「普賢行とは何か―親鸞と『華厳経』」と、宗教学者の山折哲雄氏「西行と芭蕉に開かれる親鸞―日本人の宗教心」。

午後1時から。無料。

浄土宗西山深草派 『ほとけほっとけない』の最新号刊行

浄土宗西山深草派

 

『ほとけほっとけない』の最新号刊行

今回のテーマは「お参り」

 

浄土宗西山深草派は、若者向け伝道冊子『ほとけほっとけない』の第4号を刊行した。

お寺やお念仏に興味がない若者世代に「手に取ってもらう」ことを意図して編集した。A2サイズの用紙を八つ折りにした表紙には、筋骨隆々の先祖のイラストが描かれており目を引く。冊子を開くと年中行事を墨書したシール式の朱引帳になっている。

読み物の今回のテーマは、「お参り」。お参りや供養することの意味を、平易な言葉と親しみやすいイラストを用いて解説。また、施餓鬼の意味と由来についても触れた。

「ほっとけない」は、教学部出版企画室が主体となって編集。第1号のテーマは「仏壇」、第2号は「葬式」、第3号は「念仏」とテーマを変え、第5号は「浄土」をテーマとする予定。宗派寺院に配布し、若者への布教に役立ててもらう。

仁愛大学 田代俊孝学長 「諸学の基礎は哲学にあり」

仁愛大学 田代俊孝学長

 

「諸学の基礎は哲学にあり」

田代学長が井上円了師の言葉引き

 

福井県越前市の仁愛大学・同大学院は3日、入学式を挙行した。田代俊孝学長は新入生295人を前に、浄土真宗僧侶の井上円了師の言葉「諸学の基礎は哲学にあり」を引き、仏教哲学があらゆる学問の基礎になると、自らが研究してきた生命倫理学を例に力説した。就任2年目に入った田代学長にその思いを聞いた。

仁愛大学は人間学部に心理学科とコミュニケーション学科、人間生活学部に健康栄養学科と子ども教育学科の2学部4学科と大学院人間学研究科からなり、建学の精神は『仏説無量寿経』にある「仁愛兼済」。同地は浄土真宗への信仰が篤く、武生市(現越前市)からの誘致を受けて18年前に開学した。入学生の9割は県内出身で、ほとんどの学生が県内の企業に就職する。地域に密着し、「地域共創センター」を中心に、全学的に地域連携を推進してきた。

田代学長は「学園としては、旧高等女学校、女子高校、女子短期大学などで親鸞聖人の人間観を教育の根本とした長い歴史があるが、学長就任に際して、自ら目指したのは建学精神のさらなる徹底だった」と話す。

仁愛大学では、管理栄養士の国家資格合格率が100%に近く、全国でトップレベル。ほかに小学校教員や保育士、カウンセラーとして教育の分野で活躍する卒業生も多い。

北陸三県下で臨床心理士の養成機関、あるいは公認心理師の国家試験の受験資格が取れる所は、仁愛大学大学院と金沢工大大学院で、教育系では仁愛大学のみ。

就職率の高い理由を、「まじめで純粋な学生が多く、学んだことや資格を生かして社会で働こうと夜遅くまで勉学にいそしんでいる。その基礎には、どんな職業に就こうとも、高度な教養として哲学や倫理、そして宗教心が重要となる。そのため本学では、1年で全学生が『仏教の人間観』について学ぶ。その学びに込めた願いは、真理の前に謙虚にひざまずき、傲慢さを恥じる仏教の姿勢を身につけること」と説明する。

また、学長に就任直後から、地域に密着しつつ、 多文化共生も図ってきた。地域にある企業に日系ブラジル人が多数勤務していることを鑑み、学生や地域の保育士に、学長裁量経費でポルトガル語を教える講座を開くと多くの聴講生が集まり、越前市の協力を得て継続 事業として行うことになった。「地元のニーズに合ったコースの設置などを常に研究しながら、建学精神の徹底を図る。これこそが、この地に建てられた仁愛大学を存続させていく道だと感じている」と話す。

田代学長は名古屋大学医学部で生命倫理審査委員や非常勤講師を永年務め、脳死・臓器移植や、遺伝子治療、生殖補助医療などについて、医療者らと激論を交わしてきた。その経験や、AIの発展で人間がコンピューターに使われるといわれる時代が近付くといわれる今、入学生に贈ったのが、親鸞聖人に学び、哲学館(後の東洋大学)を創設した井上円了師の言葉「諸学の基礎は哲学にあり」だった。

浄土真宗本願寺派 西光寺 交流センターを落慶

浄土真宗本願寺派 西光寺

 

寺院を地域の中心に

交流センターを落慶

 

浄土真宗本願寺派の西光寺(大分県別府市)は13、14日、「交流センター」として新築した庫裏の落慶と、親鸞聖人750回大遠忌、第17世住職33回忌の法要を営んだ。門徒ら約300人が集い、江戸期に建てられ、300年以上の歴史を持つ庫裏が地域住民の集う〝センター〟に生まれ変わったことを祝った。

初日は髙橋篤法住職、2日目は洸音若院を導師に音楽法要を修行。初日の法要前には地元の子どもらが手形を押した看板を作成し、2日目には境内脇の亀川保育園の園児らによる稚児行列を行った。両日とも交流センターの前庭などでコンサートを開き、地域の人たちが憩う姿が見られた。

また法要後は、あそかビハーラ病院の大嶋健三郎院長と、地元大分で医療者として活動する藤富豊大分県厚生連鶴見病院前院長、田畑正久佐藤第二病院院長による公開講座「生といのちに向き合って~患者さんと真摯に向き合うお医者さんのお話」を実施した。

(詳細は2019年4月27日・5月1日合併号の紙面をご覧ください)

六道珍皇寺 建仁寺起居の禅画僧の南画

六道珍皇寺

 

建仁寺起居の禅画僧の南画

没後100年の節目に修復

 

臨済宗建仁寺派の六道珍皇寺(坂井田良宏住職)は、改元奉祝新元号を記念した「春の特別寺宝展」を4月27日から開催している。

特筆すべきは、明治、大正と建仁寺を拠点に活躍した南画の巨匠・藤村曽山画伯の遺作画が初公開されること。

藤村画伯は長野県南木曽町の出身で、大本山建仁寺塔頭の正伝永源寺の一室で起居して制作に勤しんだ。建仁寺4代管長の竹田黙雷師に参禅した。また住職の祖父に当たる仰山師が藤村画伯が中国にデッサン旅行をしたと伝え聞いたとの記録が残る。

今回、公開する襖画は六曲一双、中国寺院の山水図屏風。収蔵庫に保管されているのが十数年前に見つかり、藤村画伯の作品であることが確認されていた。

昨年、経年劣化による汚れ、染み、灰汁等の除去修復を専門の表具師に依頼。「傷みが激しく、駄目かもしれない」といわれたが、美しく仕上がった。

今回の公開に際し、画伯の作品を保管している他の塔頭寺院に呼び掛けたところ、「達磨絵図」2幅が出陳されることになり、遺作展として行うことになった。

作品だけでなく、画伯の人となりが、塔頭寺院の記録に残っている。無欲活淡で、展覧会への出品などを好まなかったために、画壇に名前は残っていないが、坂井田住職は「今は平和のため仏の力がますます必要。親しみやすい画などを通じて、多くの方に仏に触れる機会を得ていただきたい」と話し、仏教寺院ならではの特別展となっている。さらに「将来、塔頭寺院同士で宝物を貸し借りして藤村画伯展を行うきっかけにもなった」と、今後の展開についても話した。

期間は5月6日まで。併せて、世界中の人々にとって「令和」の世が、戦争や天変地異、災禍のない平和で安寧な時代となることを願って、本尊である「薬師如来坐像」(重文)を特別開帳する。

H1法話グランプリ~エピソード・ZERO

法話の実力を試す

「もう一度あいたいお坊さん」グランプリ

 

「H1法話グランプリ~エピソード・ZERO」を6月2日、大本山須磨寺(神戸市)で開催する。宗派を超えた8人(7組)の僧侶が、「とっておき!の法話」を披露し、参加者の投票で「もう一度あいたいお坊さん・グランプリ」を選ぶ。参加型にしたのは、仏教に興味はあるが踏み出せずにいる人たちのハードルを取り払うことが狙い。

小池陽人H1グランプリ実行委員長(須磨寺副住職)は、「法話に優劣をつけるのではなく、あくまで“もう一度あいたいお坊さん”を決める」と説明。「自分の法話を聞く方々から評価を受ける、僧侶にとっても貴重な機会。法話への思いやスキルを高めるきっかけにもなる」と話した。

雲井雄善実行副委員長(天台宗能福寺住職)は今後の展望について、全国展開を目指しており、H1に関心のある僧侶へ実行委員会がノウハウを伝え、各地の“もう一度あいたいお坊さん”の存在を広めたいと説明した。

登壇者は、ひのう姉妹(真宗大谷派・西照寺)、市村直哉(真言宗豊山派・東光寺副住職)、本良敬典(日蓮宗・妙常寺住職)、小林恵俊(天台宗・正明寺副住職)、中村建岳(臨済宗妙心寺派・永正寺副住職)、安達瑞樹(曹洞宗・長楽寺住職)、山添真寛(浄土宗)の各氏。それぞれ特技を活かして法話する。

登壇する市村副住職は、「お寺やお坊さんに持つ悪いイメージを法話というツールを使って変えていきたい。優勝できるようにがんばる」と意気込みを語った。審査員は、釈徹宗如来寺住職(本願寺派)ほか、 落語家や大学教授などの4人。林覚乗南蔵院住職(高野山真言宗)の模範法話も行われる。

入場料は1500円。前売りのみ。須磨寺寺務所と公式ホームページ(https://www.houwagrandprix.com/)で。

大本山清浄華院 異例ずくめの御忌大会

大本山清浄華院

 

異例ずくめの御忌大会

法主代理に真野前法主

 

大本山清浄華院は20~23日、御忌大会を営んだ。真野龍海前法主が法主代理として出座し、代理も含めて浄土宗内局からの随喜がないなど、前例を見ない法会となった。

初日の慈覚大師忌は、真野前法主が法主代理として導師を勤めた。2日目の日中法要は、唱導師に指名された教師が離脱問題を理由に出座を辞退し、前法主が導師を勤めることになったが、気温が高く、前日の疲れもあったのか真野前法主が軽い熱中症の症状を見せたため、体調を考慮して吉川文雄執事長が導師を勤めた。

また、例年2日目は、唱導師に縁のある僧侶が多数出席して華やかな法会が営まれるが、21日の日中法要は随喜寺院が8人で、その半数を他宗派の僧侶が占めた。外陣も数人の檀信徒が参座するのみで、例年とは違う様子を見せた。

3日目の日中法要は、ようやく御忌大会らしい風景となった。成田淳教感応寺住職が唱導師を勤め、東京教区を中心に随喜寺院約80人が駆けつけ、外陣も檀信徒で席が埋まった。華やかになった堂内で、法主代理の真野前法主が成田住職に払子を授けた。(写真)