月別アーカイブ: 2019年6月

四国別格二十霊場 開創50周年記念し高野山出開帳

四国別格二十霊場

 

開創50周年記念し高野山出開帳

奥之院燈籠堂で記念法要も

 

弘法大師の伝承を伝える古刹が結成する四国別格二十霊場(会長=田中鐘暁椿堂常福寺住職・高野山真言宗)は7~9日、開創50周年を記念して「高野山出開帳」を行った。

7日は高野山大師教会にお砂踏み特設道場を開筵して開白法要を、9日は田中会長を導師に、奥之院燈籠堂で結願記念法要を厳修した。

法要後、仁賀大善奥之院維那は「同行二人という素晴らしい伝統が四国にはある。それらの方々が先達となり、礎となって信仰を広めてくださっているのだということを、私自身も四国遍路を体験して感じた」と挨拶し、併せて奥之院で日々お大師さまに奉仕する僧侶らの生活を披露した。

「記念散華」や、「記念納経帳」「記念念珠親玉」も授与し、多くの先達、お遍路さんらが参加した。

仁賀維那と同じ時期に高野山で修行した田中会長は、「50年は、高野山の1200年に比べるべくもないが、人の人生に比してみれば決して短い期間ではない。今日の感動を胸に、お大師さまのみ教えを広く伝えるべく、心新たに次の50年へと歩んでいきたい」と話していた。

同霊場は各札所で数珠玉を授与し、満願で念珠が完成することからも人気を集めている。

全真言宗教誨師連盟 第59回全真言宗教誨師連盟大会

全真言宗教誨師連盟

 

第59回全真言宗教誨師連盟大会

テーマは「慈悲心にふれる」

 

全真言宗教誨師連盟は17、18日、総本山長谷寺大会を開催した。

今回は智山派の小寺秀仁会長就任後、初の大会となった。開会式で小寺会長は「加盟各派の本山を会場として毎回大会を実施しており、米田弘明前会長の代には、北海道の金峰寺を会場に、旭川刑務所の視察など、宗教教誨の源流に触れる学びの機会を得た。今回は大会テーマ『慈悲心にふれる』のもと、大いなる実りとなることを願っている」と式辞を述べた。

自らも長く教誨師活動を行ってきた田代弘興化主は長谷寺大会の実現を心から歓迎し、「教誨師の存在はあまり知られていないようだが、映画『教誨師』もできて、認知度が上がるのではないかと期待している。宗教教誨では他宗に比べまだ歴史も浅く、数も少ない真言宗僧侶だが、こうした機会に相互に研鑽を深め、ますますの活躍を願う」と祝辞で述べた。

真言宗豊山派および長谷寺役職員一同の歓待を受けた参加者らは、本堂で根岸榮宏寺務長導師のもと法要を営み、諸堂を参拝。田代化主の講話などを拝聴後、橿原市内の会場へ移動。翌日は星野英紀宗務総長が講演した。次回は京都市の総本山仁和寺大会。

真宗大谷派 第14回親鸞フォーラムを開催

真宗大谷派

 

第14回親鸞フォーラムを開催

平成を振り返り今を生きるヒントを

 

真宗大谷派真宗会館が主催する「第14回親鸞フォーラム」が5月25日に千代田区で開かれた。(写真)仏教者と各界の有識者が対話するシンポジウムとして毎年開催している。

今回は「時代×記憶×仏教―〝平成〟という名のモニュメント」をテーマに、政治学者の中島岳志東京工業大学教授、フォトジャーナリストの安田菜津紀氏、一楽真大谷大学教授、そしてコー ディネーターを名和達宣氏(真宗大谷派教学研究所研究員)が務め、平成を振り返り、今を生きるためのヒントを考えた。

中島氏は「単なる政治の問題ではなく、現代日本の内面的な心の不安と関係している」と、平成における右傾化の問題を取り上げた。中島氏は現代の不安を語る上で、岡崎京子『リバーズ・エッジ』、鶴見済『完全自殺マニュアル』、小林よしのり『戦争論』の平成初頭の三つのベストセラー作品を紹介。『リバーズ・エッジ』と『完全自殺マニュアル』は、バブル崩壊後の日本で、死が隣になければ生きているリアリティーも獲得できないという問題を問い掛け、この問題に一つの形を与えたのが『戦争論』だったと語った。

「『戦争論』は、うだるような平和という文章から始まる。しかし50年前、私たちの祖父母の世代は命をかけて国のために戦い、戦死をすれば靖国神社に英霊として祀ってもらえるという究極の意味を国家は与えた。『本当に国家に意味は必要ないのか、現代社会で死に対する物語は必要ないのか。私は必要だ』というのが小林さんの主張だった。『戦争論』が若者に響いたのは生の空白という部分。愛国という名の下で生の意味、国の物語を取り戻そうと若者が共感した背景を考えなければならない」と、日本の右傾化を、現代日本の根源的な不安の問題、生のリアリティーの欠如という視点から問題提起した。

安田氏は大学時代に通い続けたシリアについて、内戦のイメージとはかけ離れた美しい風景を紹介し、「最初から戦場と呼ばれていた場所はなく、最初から難民と呼ばれていた方もいなかった」と訴えた。

安田氏は東日本大震災発生後、夫の両親が住む陸前髙田に向かった。義母は津波により気仙川を9㎞もさかのぼった場所で、愛犬2匹の散歩ひもを握りしめたまま見つかった。外科医だった義父は県立高田病院の最上階で首まで波に漬かりながらベッドにしがみついて一命をとりとめた。

安田氏が震災直後に唯一シャッターを切れたのが、陸前髙田の一本松の写真だった。「一本だけ、波に耐え抜いたなんてすごい」と夢中になって撮った写真はその後、新聞に掲載され、「奇跡の一本松」と名付けられた。

「ようやくこの町のことが伝えられる」と喜び、新聞記事を持って義父に見せに行った。すると義父は「なんでこんなに海の近くに寄ったんだ。津波が来たらどこに逃げるんだ」と声を荒げ、さらに「あなたたちのように震災前の7万本あった松の木と一緒に暮らしていなかった人たちにとっては希望に見えるかもしれない。でも、僕たちのようにここで生活していた人たちにとっては、たった一本しか残らなかったことは、津波の威力の象徴以外の何ものでもなく、見たくはなかった」と言われた。

その言葉に安田氏は「誰のための希望を撮りたかったのか」「一体誰の立場に立って写真を撮ろうとしていたのか」と自問する。「私自身が取材者として完ぺきではなかったように、私たちはそれぞれ不完全な存在。だからこそ、常に問い続けなければならない」と語った。

フォーラムの最後に中島氏は「死者の問題こそが未来志向」と語り、柳田國男の『先祖の話』の序文を引用した。

『先祖の話』では全国の先祖供養の話を紹介している。柳田國男は現在の町田あたりで調査を終えて停留所でバスを待っているとき、一人の老人と会話した。その老人は財を成し、子どもも育て、「あとやることは良いご先祖になることです」と語った。柳田國男はいい言葉だなと思うと同時に、この老人には死んだ後にも仕事があるのだと感動した。

中島氏は「先祖の問題を考えることによって、まだ見ぬ未来の他者との対話が始まる。死んでから始まる人生がある。先祖のことを思い、自分が先祖になる自覚の中で生きていくことは、極めて未来志向。今の人間は一代主義になっているが、先祖の問題、死者の問題こそが、私たちが長いスパンで生きていく場所や環境を保つ上でも重要で、仏教が大切にしてきたこと。そのことをないがしろにしては未来を失ってしまう」と提言した。

曹洞宗宗議会人権学習会 作家・寮美千子さんが講演

曹洞宗宗議会人権学習会

 

作家・寮美千子さんが講演

奈良少年刑務所での絵本と詩の教室

 

曹洞宗宗議会開催中の25日、議員を対象とした人権学習会が開かれ、作家・寮美千子さんが「加害者である前に被害者だった~奈良少年刑務所の絵本と詩の教室」と題して講演した。

童話作家の寮さんは、絵本と詩を使う画期的な社会性涵養プログラムの講師を9年間にわたって務め、計186人の受刑者(17歳から25歳)に授業を行ってきた。

13年前に寮さんは首都圏から奈良へ転居し、奈良少年刑務所の赤レンガの建物に興味を持ち、刑務所で行われた矯正展を見学。その訪問をきっかけに、細水令子統括官から「彼らは親から受けた虐待、ネグレクト、また発達障害など、何らかの原因があって刑務所に来た。つらい現実に向き合い、心が壊れてしまった彼らは加害者である前に被害者だった。回復のためには適切な支援が必要で、そのための情緒教育の講師をしてほしい」と依頼された。

寮さんは「1ヵ月にたった1回の授業を、1期半年間行ったところで何が変わるのか」と疑問に思ったが、最初の授業から効果を感じたという。

各作業所で特に問題のある10人ほどが受講者として選ばれ、1回目の教室ではアイヌの民話を題材とした自著絵本『おおかみのこがはしってきて』を使用。最初に寮さんが朗読した後、受講者の2人が朗読を行った。学校の教室で発言をしたこともないような受講者が戸惑いながらも精いっぱいやり遂げると教室には拍手が湧き、朗読した受講者のうれしそうな姿に手応えを感じた。

また、授業では受講生の詩を用いて、お互いに感想を述べ合ったりもしたが、「自分と同じようにつらい人生を歩んできた仲間だからこそ、相手に対して思いやりの言葉や感想を話すことで、彼らは自分自身も癒やされていった。そこでは場の力、座の力を感じた。人は人の輪の中で育つのだと思った。信じられない犯罪を起こした子も、優しい気持ちを持っているのだと改めて思わされた」と話す。

毎回、最終の授業では「こんな仲間たちに刑務所に入る前に会いたかった」と涙ながらに受講生が別れるが、寮さんは「世間に出ると彼らは前科者であることを隠してびくびくしながら生きざるを得ない。でも『今、がんばっている自分を見てください』という彼らに、『何でも話を聞くよ』という差別の目のない大人が増えてくれれば」と訴えた。

真宗大谷派 中高生対象の奉仕団募集

真宗大谷派

 

同朋会館に泊まろう

中高生対象の奉仕団募集

 

真宗大谷派は、中高生を対象に夏休み期間中の奉仕団を募集している。

8月8日から2泊3日で、中学生30人、高校生15人。講師は古川潤哉氏(浄土真宗本願寺派浄誓寺)。

新装されて快適な空間となった同朋会館に宿泊し、真宗本廟で奉仕や、遊びの要素を加えた体験学習などを行う。研修部では、「思いきり遊んで、じっくり語り合おう。家でも学校でもできない経験ができる貴重な3日間になるはず」と参加を呼び掛けている。日程中に帰敬式も受式できる。詳細は研修部(☎075-371-9185)へ。

浄土宗 宗勢調査から探る寺院の未来

浄土宗

 

寺院・教区活動の将来考える

宗勢調査から探る寺院の未来

 

全国教区議会議長会は21日、宗勢調査会委員長を務める今岡達雄総合研究所副所長が「第7回宗勢調査集計結果からみる本宗の将来展望」と題して講演する研修を行った。

第7回宗勢調査は、2018年10月1日現在の状況をまとめた統計で、昨年末の『宗報』に調査結果が掲載されている。現在、調査結果を分析し、9~10月には分析結果が宗に報告される。今回、分析の一部が先立って披露され、寺院や教区における教化の方向性を考える内容となった。

全国的に檀信徒数が減少傾向にあるため、寺院や住職の収入が減少している。住職の平均所得は、一般サービス業に従事する人々の平均所得と同等程度であることが分かった。また、施餓鬼などの定期法要の実施状況を見ると、20年間で追善法要や棚経など、いずれも葬儀に関連する法要が増加した一方で、その他の法要が減少しており、浄土宗の教化の中心が葬儀になっていることが分かった。

葬儀件数は全国的に減少傾向だが、例えば過疎地域である石見・鳥取・出雲の3教区は、隣接していても地域によって葬儀件数の増減にバラつきがある。過疎化が葬儀件数減少に拍車をかけているのではなく、むしろ教化の在り方に影響を受けていることも明らかになった。

首都圏などで増加している直葬や中陰の省略などは、将来的に全国的な傾向になることが予測される。また、国内人口の減少とともに就労人口も激減すると見られており、今岡副所長は「将来、家庭環境や宗教観の変化により葬儀が教化の中心ではなくなる」と調査を踏まえて語った。その上で、新しい教化施策の展開が必要であるとし、「我々は、宗や教区に守られた護送船団方式でやってきたため、新しいことに取り組みにくい。しかし、新しい布教方法や法要の勤め方を模倣することも大切」と語り、「より人々に働き掛ける方法を考えなければならない」と要請した。

浄土宗西山禅林寺派宗会 開宗850年慶讃事業を報告

浄土宗西山禅林寺派宗会

 

開宗850年慶讃事業を報告

特別昇級規程など議決

 

浄土宗西山禅林寺派(岡田相信議長)は25日、第121宗会を開き、宗祖法然上人立教開宗850年記念特別昇級規程など8議案を議決した。また、開宗850年慶讃事業として検討している内容も報告された。

同派では、中央および地方で開催する教学講習の受講が僧階昇級の基本となっているが、冥加料に相当する「教学資金」を納付することで僧階が上がる特別昇級制度を設けている。今回の規程改定では、今年8月1日から2025年3月31日の期間に限り、立教開宗850年を記念して「教学資金」の納付額を僧階に応じて3~5割引き下げることにした。

開宗850年慶讃事業については、建築・営繕部と参拝部、教化伝道部で部会から経過報告がなされた。建築・営繕部門では、現在議場として使用している聖峯閣をリフォームして宗務所を移設するほか、禅林寺会館を解体および除却して議場や会議室、宗務総長室などが入る施設に改築。また、現宗務所の内部改装を行う予定。現在、聖峯閣の基本設計を先行して進めており、その他の施設も検討していく。

(詳細は2019年6月29日号の紙面をご覧ください)

四国八十八ヶ所霊場会 大林会長導師に天皇御即位奉祝法要

四国八十八ヶ所霊場会

 

大林会長導師に天皇御即位奉祝法要

札所寺院が令和の安寧を祈る

 

四国八十八ヶ所霊場会は12日、四国霊場開基の根本道場である総本山善通寺に結集し、大林教善会長導師のもと、「天皇御即位奉祝法要」を営んだ。

大林会長は「我が国は敗戦の結果、新憲法の下、戦争を放棄して世界唯一の平和国家として再出発し、戦後の昭和、そして平成、令和を受け継ぎ、国民の幸せと国の一層の発展、世界の平和を祈る」と慶讃文を奏上。

法要には、同会総裁を務める菅智潤善通寺法主も臨席し、札所寺院や先達ら出席者一同、令和の世が平和で安穏であるよう祈念した。

真言宗豊山派雨引山楽法寺 金剛力士像が「慶派」の可能性大

真言宗豊山派雨引山楽法寺

 

金剛力士像が「慶派」の可能性大

帰還後は保護と公開へ施策検討

 

真言宗豊山派の雨引山楽法寺(茨城県桜川市・川田聖定住職)の仁王門に安置されている金剛力士像が、「慶派」のものである可能性が高いことが分かった。

修復に伴い一昨年から東京芸藝術大学などが調査を行い、同学で7~11日まで展覧会を開催した席で、藪内佐斗司副学長が発表した。

藪内副学長が2体のうち1体の過去の修復で貼られた布などを剥がしたところ、造られた当初の姿が現れた。

写実的でスマートな造形、足が細くて長いといった特徴から、鎌倉時代前期の運慶や快慶で知られる「慶派」の仏師によって造られた可能性が高いことが分かった。

また1体の胎内からは室町時代の木札や未開封の巻物が複数見つかった。同学で、さらに調査を進めるそうだが、藪内副学長によると茨城県下はもとより、関東地方で最も古い金剛力士像だと推測されるという。

美術史的な価値は極めて高いとする専門家の評価も受けて、川田住職は「予期せぬ展開に驚いている。文化財は保存も大事だが、公開することも大切だと考えているので、多くの人に見ていただけるようにしたい」と話す。帰還は来年と見込まれている。

 

アジア仏教徒協会(ABA) 日韓青少年交流派遣団を募集

アジア仏教徒協会(ABA)

 

日韓青少年交流派遣団を募集

寺院参籠体験や座禅体験を

 

アジア仏教徒協会(ABA)は、韓国青少年との交流を通じて友人をつくり、国際理解を深めることを目的に開催する2019日韓共同未来プロジェクト第11回「アジアの未来を担う日韓青少年交流派遣団」の参加者を募集している。

2002年に日韓が共同して開催されたサッカー・ワールドカップをきっかけに、この年は「日韓文化交流元年」と位置付けられた。さまざまな文化交流が行われる中、03年に大韓佛教曹溪宗の外郭団体「社団法人パーラミータ青少年協会」が、日本と韓国との未来へ向けた共同プロジェクトを立ち上げ、ABAに青少年の派遣を要請したことに始まる。

今回は8月1~5日の4泊5日で、ソウルでのパーラミータキャンプやテンプルステイ(寺院参籠体験)、座禅、英語による弁論大会などを行う。

募集対象は13~24歳の学生10人程度(小学6年生も可)。費用3万円程度。申し込みは、アジア仏教徒協会事務局(福岡市東区香住ケ丘5-9-38、☎092-400-3616)へ。

ABA常任理事でもある小島宗彦本光寺住職(佐賀県伊万里市)は「アジアの架け橋として曹洞宗僧侶が中心となって結成したABAも、今では臨済宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗本願寺派など、宗派を超えた賛同者を得て活動の場を広げている。青少年を交互に派遣してお寺での滞在やホームステイをしてもらう交流派遣団も、若者たちの交流と研修の場となり、参加した青年たちが〝アジアはこころで結ばれる〟ことを実感してくれている」と話している。