月別アーカイブ: 2019年6月

真言宗智山派 子どもの貧困をテーマに研修

真言宗智山派

 

子どもの貧困をテーマに研修

寺院ならではの貢献を模索

 

真言宗智山派は3、4日、第21回智山総合研修会を宗務庁で開催し、九つの分科会に分かれてさまざまな問題について考えた。

4日の第5分科会は智山青年連合会が担当し、「寺院だからできる社会貢献活動とは~子どもの貧困から考える」をテーマに、100人以上が参加して行われた。

冒頭、山口純雄会長は「地域社会との関わりの中で、僧侶はいろいろな役割を求められる。その一つとして、今回は貧困にスポットを当てた。ここで学んだ話を自坊に持ち帰って活かしてほしい」と語った。(写真)

講師の廣澤満之白梅学園大学准教授(東京・智山派淨福寺副住職)は、子どもの貧困や福祉を取り巻く状況と問題点をさまざまな観点から説明。貧困は所得の面から語られることが多いが、実際は複数の要因が絡み合っているとし、児童の学習支援の重要性を訴えた。

また、人・情報が集まりやすく、社会の信頼性が高いという寺院の特性を挙げ、地域コミュニティーの場になることが大事と述べた。

おてらおやつクラブ事務局の福井良應御室派興山寺副住職は、活動体験談やノウハウ、実践を通して感じたことなどを話し、「物資面の援助だけでなく、誰かが自分たちを見てくれているという安心感を与えることが大切」と語った。

両講師とも貧困者対策に人間関係の構築を挙げ、寺院の特性を活かした、つながりづくりの有効性を説いた。

大本山くろ谷金戒光明寺 久米慶勝氏が新法主に

大本山くろ谷金戒光明寺

 

久米慶勝氏が新法主に

髙橋法主の辞意表明に伴い

 

浄土宗の大本山くろ谷金戒光明寺の新法主に、滋賀教区の久米慶勝正圓寺住職(東近江市)が推戴された。

5日に開催された第1回法主推戴委員会で、髙橋弘次法主が辞意を表明したことを浦田正宗執事長が伝え、13日の同委員会で久米氏の推戴を満場一致で決めた。7月1日に着任し、4年後の開宗850年に向けた教化の推進が期待されている。

久米新法主は77歳。滋賀大学経済短期大学部卒。立命館大学卒。

1993年総本山知恩院執事、2006年総本山知恩院布教師会会長となり、07年に総本山知恩院「宿老」。15年から宗議会議員を務め現在に至る。宗外では滋賀県社会教育・青少年育成推進委員、京都市山科刑務所教誨師、佛教大学非常勤講師を歴任した。

布教師歴は今年で50年を迎える。聴者に同じ話を聞かせないように法話の内容や場所を全て記録しており、これまでの法話の席数は6570席(6月13日現在)。3日に1度は法話に立ってきた。

髙橋法主(84歳)は07年6月から法主を務めてきたが、近年は移動に車いすが必要となるなど加齢による負担も大きくなり辞意を表明。本山関係者が複数回にわたり再任を要請したが、「元気な間に覚悟を決めたい。迷惑をかけたくない」と辞意は固かった。

曹洞宗薬王寺 札幌宮の森に新本堂が落慶

曹洞宗薬王寺

 

札幌宮の森に新本堂が落慶

交流のある韓国寺院も随喜し

 

曹洞宗薬王寺(札幌市)は9日、開創50周年ならびに新本堂落慶法要を営んだ。

薬王寺は、先代・田中孝印師が終戦後まもなく、富山県蓮浄寺から北海道に渡り、宗派を超えた礼拝慰霊所として円山西町に錫を置き、伝道開法。

1969年に法輪閣慰霊堂を建立し、71年には中央寺7世で後に大本山永平寺貫首となる秦慧玉禅師の導師により本堂落慶を営んだ。84年には現在の中央区宮の森に本堂、納骨堂を移転建立し、薬王寺として新たに寺号公称を果たした。

孝印師は北海道開拓殉難者の慰霊にも努め、境内に北海道無名開拓殉難者慰霊碑を建立するなど平和活動に心血を注ぎ、現在の田中清元住職は師の思いを受け継ぎ、各地での戦没者の慰霊や、韓国をはじめとする海外寺院とも交流。韓国の諸寺院で慰霊供養を行う訪韓は30年以上に及ぶ。

法要は乙川暎元大本山總持寺監院が導師を勤め、160人の寺院住職と、韓国から訪れた32人が新本堂の完成を祝った。

薬王寺では日々の坐禅会をはじめ、御詠歌、空手教室、夏休み子ども坐禅会、花祭り、そして震災復興支援チャリティーコンサートなどを行っている。新たな本堂は、檀信徒の教化活動はもとより、今後も広く市民に開放できるよう設計した。ブルーグリーンのドーム型をした印象的な新本堂には、屋内霊園や納骨堂も完備している。

田中住職は「法要だけではなく、皆さんに開放しようとバリアフリーにして空間も有効利用できるようにした。ヨガ教室、空手教室など、いろんな目的があっていい。音響面にも配慮し、コンサートもできる設計にした。市民に開かれた寺院として、災害時の避難所の認定もいただき、すでに胆振東部地震の時には宿泊してくれた知人もいる」と話している。

G20諸宗教フォーラム2019京都 世界の課題に宗教から提言

G20諸宗教フォーラム2019京都

 

世界の課題に宗教から提言

今回はAIを新規に取り上げ

 

大阪でG20が開催されることに併せて、G20諸宗教フォーラム2019京都(瀬川大秀会長・総本山仁和寺門跡)が11、12日に京都市内で行われた。同諸宗教フォーラムは、これまでもサミットが開かれる前に宗教者の意見を集約し、政治家に発信している。

今回も例年同様、日本の仏教者と、海外からイスラーム、キリスト教関係者らが一堂に会し、環境、経済格差や貧困など、政治では解決しえない問題について、宗教の智慧に基づいて話し合った。

仏教界と共同して環境問題に取り組む京都府と京都市とが共催して京都府議会の旧議事堂で行われた開会式には、海外からの来賓や門川大作京都市長らが臨席し、瀬川会長がフォーラムの歴史と開催趣旨を説明した。(写真)また来賓が歓迎の辞を述べた。

運営委員長を務める三宅善信金光教泉尾教会総長が進行を担い、事務局長は懸野直樹野宮神社宮司が務めるなど、神仏習合の歴史を持つ日本ならではの大らかな雰囲気の下、それぞれの宗教の英知が八つのセッションで話し合われた。

特に今回は、テーマの一つとして「AI」が初めて取り上げられた。人工知能(AI)はいずれ人間の能力を超え、支配するのではないかと危惧されている。

セッション3「AIの脅威と人間の責任」では、神職の資格を持つ才脇直樹奈良女子大学教授(工学博士)をモデレーターに、SE経験者の中村殊萌元真言宗大覚寺派教学部長、化学会社での研究職を務めた滝澤俊文むつみ会宗務長、三宅運営委員長がパネリストを務め、国を問わずAIの研究にしのぎを削る中で、それを食い止めることができるのは「宗教が持つ英知」であることを確認。

「AIを含めたサイバー空間にも『人命と人権の尊重』という概念を拡張すること」、「AIを道具にした犯罪の脅威は、利用する人間の心を扱う宗教者の課題であること」、さらにAI自身がディープラーニングを重ねて人間の命令に背き、人間がAIを制御しきれなくなるという脅威については、宗教者、政治家、企業家、技術者による分離融合型のアプローチが必要であり、「国際的な合意のもとでの管理方法(人材養成を含む)を議論すること」を提言としてまとめた。

真言宗豊山派楽法寺 三笠宮妃殿下が雨引観音を訪問

真言宗豊山派楽法寺

 

三笠宮妃殿下が雨引観音を訪問

境内鬼子母神堂前にバラをお手植え

 

茨城県桜川市の真言宗豊山派雨引観音楽法寺を29日、三笠宮寛仁妃信子さまが訪問し、境内の池に面した鬼子母神堂前にバラを植樹された。

信子さまは川田興聖住職の案内で境内を見て回り、筑波の山並みを見渡す高台からの景色を楽しまれた。

日本ばら協会名誉総裁である信子さまは、28日に行われた日本ばら協会の記念行事に出席するため、県の招待で初めて茨城県を訪問。諸行事に参加した後、県下で名高い観音信仰の古刹を訪問した。

大徳寺派大慈院 百貨店で禅を伝える

大徳寺派大慈院

 

百貨店で禅を伝える

新しい辻説法のカタチ

 

臨済宗大徳寺派の戸田惺山大慈院住職は6~10日に阪急うめだ本店で開かれた「にちにちこれ好日~Zenをあそぶ」で講演や茶会を行った。

同イベントは、賑やかな店内に、穏やかに過ごせる空間を作り、禅の魅力を伝える百貨店の新しい試み。

講演では、坐禅の基本を分かりやすく解説し、戸田住職の読経のもと坐禅を実践。会場に集まった人々は、心穏やかな時間を体感した。大阪市内から来た女性は「百貨店のイベントはいつも賑やかだが、お坊さんが来て坐禅をしているとは思わなかった。参加できてよかった」と述べた。

会場中央には竹で作った骨組みの「竹の茶室」を設置。訪れた人たちは、戸田住職がたてたお茶と竹で作られた空間を楽しんだ。(写真)戸田住職は、百貨店での説法を「現代の辻説法」だと話し、「昔のように交差点での辻説法はできないが、このような形で普段お寺に来ない方が買い物のついでに参加し、来てよかったと思ってもらえていたらうれしい」と語った。

西山三派「合掌の会」 中西前管長を慕う団参

西山三派「合掌の会」

 

中西前管長を慕う団参

総会で遠忌参画を決定

 

西山三派の尼僧で結成する「合掌の会」(澤田教英会長・西山浄土宗安養寺)は30日、中西玄禮浄土宗西山禅林寺派前管長の自坊である大覚寺(姫路市網干区)に団参した。

東日本大震災などの物故者を慰霊する法要を営んだ。続いて中西前管長は、「長い大覚寺の歴史の中でも、これほどの尼僧さんにお集まりいただいたのは初めてと思う」と冒頭に語り、法話した。(写真)

「合掌の会」は、西山三派が交代で事務局を務めており、今年度は禅林寺派が担当した。同派の奥垣内圭哲宗務総長が各方面に参加を呼び掛け、例年を超える42人が参加した。奥垣内宗務総長は「事務局を預かった以上は少しでも多くの参加をと考えた。多くの方に集まっていただき、本当にありがたい」と感謝していた。

澤田会長は「初めて中西猊下の大覚寺に参らせていただいた。時間が許せば、もっと話が聞きたかった」と話し、今後の会について「世間では子どもたちを巻き込む悲しい事件が多く起こっている。女性ならではの視点で人々の心に寄り添えるような活動をしていきたい」と展望を語っていた。

随行した西山浄土宗の櫻井随峰宗務総長は「以前は西山浄土宗の青年僧のために、中西猊下に話していただくことが多かった。今回、久しぶりにお話を聞けてうれしかった」とし、浄土宗西山深草派の加藤良邦宗務総長は「初めて大覚寺に参拝した。久しぶりに中西猊下にお会いできて感激した」と話していた。

同会は会場を移して2019年度の定期総会を開き、次年度5月の総会は西山上人の弟子・浄音上人の750遠忌法要に参画することを決めた。

浄土宗 在日コリアン差別を学ぶ

浄土宗

 

啓発講師のレベルアップへ

在日コリアン差別を学ぶ

 

浄土宗人権同和センターは11、12日、浄土宗啓発講師研修会を大阪市生野区の多民族共生人権教育センターで開き、在日コリアンなど海外にルーツを持つ人々に対する差別について学んだ。

研修会は、宗内において人権教育を担う啓発講師のレベルアップを図るために毎年2回開催している。2016年に啓発講師を30人増員しており、今回は新規加入した啓発講師を対象に実施した。

開会の挨拶で幸島正導センター長は「在日コリアンの方々に対する差別に、我々の目が向いていないのが現実。いまだに差別・区別が続いているが、直に接したことがないと現実を知ることが難しい」とテーマ設定について語り、「人と人が仲良くしなければ、世界は幸せにならない」とした。

初日は、NPO法人多民族共生人権教育センターの文公輝事務局長が、日本に併合された朝鮮半島出身の人々が日本本土に入植した経緯や、日本人として生活してきたにもかかわらず国籍が奪われた事実を説明。また、戦後に帰国できなかった理由などにも言及した。

加えて、レイシャルハラスメントについての講義を行い、「人種に基づいて区別することが、そもそも差別」と指摘した。参加者らは講義を踏まえて、身の周りに起こっている人種差別についてワークショップ形式で討論した。(写真)2日目は、コリアンタウンを巡るフィールドワークを行い、多様な人種が共生する事例を学んだ。

研修に参加した啓発講師は「国際関係と切り離して考えなければならない。差別をなくすためにも、相手のことをよく学ぶことが大事だと思った」と話し、別の参加者は「今まで疑問だったことが、今回の研修ではっきりと分かった」と感謝していた。

伏見稲荷大社 「御田舞」奉納の中で田植え

伏見稲荷大社

 

一年の五穀豊穣を祈る

「御田舞」奉納の中で田植え

 

伏見稲荷大社は10日、田植祭を斎行した。

本殿祭の後、神田で田植神事を行った。神楽女が平安時代の汗衫衣装をまとい「御田舞」を舞う中、奉耕者として三島初穂講々中の約30人が、あかねだすきに衣笠姿で苗を植え、一年の豊作を祈った。(写真)

苗は4月の水口播種祭でまいた籾種から生育した早苗を、本殿に供え、唐櫃で神田に運んだ。

当日は天候が不安定だったが、神事中は雨もやみ、多くの参拝者が見守った。参拝者の関根治男さんは「美しい音色の中、舞う姿は優雅だった。雨が上がったのも神事の効果かも」と語った。

臨床僧の会・サーラ お茶を通した傾聴活動

臨床僧の会・サーラ

 

お茶を通した傾聴活動

患者や家族、スタッフの支えに

 

京都府久御山町の京都岡本記念病院で6日、「緑蔭新茶の会」が開かれ、臨床僧の会・サーラ(代表:佐野泰典妙心寺派法輪寺住職)に所属する僧侶が病院に訪れた人や病院スタッフの話に耳を傾けた。(写真)

「緑蔭新茶の会」は、臨床僧の会・サーラが行っている傾聴活動の「緑蔭」を通院患者にも知ってもらおうと、2016年から始まった。1階のエントランスホールに茶席と、戸田惺山大慈院住職(大徳寺派)の「竹の茶室」を設置。訪れた通院・入院患者や家族、病院スタッフは、抹茶や煎茶、お菓子を味わいながら僧侶との会話を楽しんだ。

毎週木曜日に病院の緩和治療病床で開く「緑蔭」には患者や家族が訪れ、何気ない話や人に話せずため込んでいる思いを僧侶に語る。「入院中、天井と壁を見つめる日々の中で僧侶と話す『緑蔭』は、患者にとって大切な時間」と話す看護部主任の青木薫さんは、「患者を看取るとき、私たちもとてもパワーが必要になる。お坊さんはスタッフの心も疲れていないか気遣ってくれて、とても助かっている」と語った。

佐野代表は今後について「あれでよかったのかと悩む遺族や、患者を看取り、心休まらぬうちに新たな患者の対応が始まる病院のスタッフの継続した心のケアも課題の一つ。僧侶が、消化不良で過ぎ去る毎日のクッションになれたらいい」と語る。また今回、臨床僧の会・サーラの立ち上げに関わった河野太通代表顧問が、初めて臨床僧の活動を視察。「このような医療機関が増え、医師や看護師、患者さんのために有意義で本質的な活動を継続していきたい」と述べた。