月別アーカイブ: 2019年11月

クラウドファンディング花盛り 仏教界で活用される理由とは

 インターネットを通じて幅広く事業資金を募るクラウドファンディングに、伝統仏教教団や有名寺院が取り組む例が増えている。浄土宗の大本山増上寺は伽藍の改修事業で導入し、真言宗醍醐派の総本山醍醐寺は災害復旧費用を募った。いずれも目標金額を上回る浄財が寄せられており、好評を博している。
 
 増上寺が導入したのは、開宗850年慶讃事業の一環である大殿の屋根瓦総ふき替え。11月15日に目標金額200万円で募集を始めたところ、2週間を待たずに目標金額を大幅に超えた。支援者数も目標の200人を上回る289人に達した。

 ふき替えは、劣化が進む大殿の屋根瓦約6万枚を、軽量で耐久性の高いチタン製瓦にする。予算は約14億円で、資金の大部分は関係寺院や檀信徒からの勧募と自己負担でまかなう。このため、必ずしもクラウドファンディングで資金を調達する必要はなかった。

(詳細は文化時報11月30日号をお読みください)

天皇陛下の御即位慶祝 仁和寺で御大典奉祝法要

 真言宗18総大本山で結成する真言宗各派総大本山会(芙蓉良英代表総務)は、天皇陛下御即位を慶祝して22日、総本山仁和寺で「御大典奉祝法要」を執り行った。真言宗長者の田代弘興長谷寺化主が導師を勤め、各山山主が職衆として出仕。各本山の重職らが列席し、宗を挙げての大法要となった。

 田代化主は「令和の御代に福を招き、無比の加護を垂れたまわんことを乞う」と敬白した。

(詳細は文化時報11月30日号をお読みください)

暢顯門首「深く感謝」 在任中最後の報恩講 真宗大谷派

 真宗大谷派の大谷暢顯門首は28日、東本願寺で行われた門首としての最後の報恩講で挨拶し、「これまでの23年間、全国の御同朋・御同行の方々とともに真宗の教法を聞き続けられたことは、何よりの喜びです。今日までのお支えに心から深く感謝申し上げます」と謝意を示した。
 
 暢顯門首は来年6月30日付で退任し、大谷暢裕鍵役が後任の門首に就任する。このため門首としての報恩講出仕は最後となった。
 
 暢顯門首は、門首に就任した1996年7月当時を振り返り、「お断りするのも後で苦しむ、お受けしても後で苦しむ。それならお引き受けし、宗門の皆さんの期待に添わねばならないと思いました」と、決意に至った心境を語った。
 
 また、「門首として報恩講を勤めるのは本年で最後となりますが、あらためて宗門の歴史と先達の願いに思いを致し、来年の6月までは、門首として精いっぱい尽くしてまいります」と述べた。
 
 報恩講の御満座を迎えたこの日は、全国各地から門徒ら約6000人が参拝。御影堂では出仕僧侶約70人による坂東曲が披露された。体を前後左右に動かしながら念仏と和讃を繰り返す力強い勤行に、参拝者らは見入っていた。

〝伝える〟とは何か 龍谷大でシンポジウム

 龍谷大学大学院実践真宗学研究科(鍋島直樹研究科長)は21日、公開シンポジウム「伝道を考える~これまで・そしてこれから」を開いた。節談説教とテクノ法要という「過去と未来」と見られがちな伝道方法を取り上げ〝伝える〟とは何かを話し合った。
 
 貴島信行龍谷大学文学部教授の講演「浄土真宗における伝道の目的と課題」では、伝道を「本願の救済が私に伝わり、他者に伝えること」と定義し、基本が「自信教人信」であることを確認。節談説教とテクノ法要 について解説や実演などで振り返り、全員で伝道の可能性を討議した。

(詳細は文化時報11月30日号をお読みください)

火祭りに1000人 無病息災を祈願 大本山須磨寺

 真言宗須磨寺派の大本山須磨寺(小池弘三貫主)で23日、「須磨の火祭り~大柴燈大護摩供 火生三昧火渡り修行」が奉修され、約1000人が参拝した。
 
 境内に特設した道場で柴燈大護摩を営み、醍醐派の麻生紀雄浄土寺住職をはじめ、醍醐派僧侶らも出仕した。
 
 法要後、火床を平らに整えて、火生三昧を行った。小池陽人寺務長ら僧侶に続き参拝者も次々と火床の上を渡って、無病息災を祈願した。

東本願寺前の市民緑地計画 バス臨時駐車は可能

 真宗大谷派と京都市は21日、同市下京区の東本願寺門前の市道と、宗派所有の緑地を「市民緑地」として整備すると発表した。参拝者や観光客の交流の場として活用することで、門前の活性化を目指す。
 
 整備するのは、門前に広がる緑地約4000㎡と、隣接する市道約3000㎡。市道は廃止し、緑地と一体の空間として活用する。市民のイベントや祭りにも利用して地域の活性化を図るほか、災害時の避難場所としての役割も期待される。
 
 着工開始時期は未定で、完成までは3年程度を見込む。工事と管理は京都市が担う。

 計画は、烏丸通の西側を南北に通る門前の市道約260mと、隣接する緑地が対象となる。緑地は現在、年に一度のイベント会場に利用されているが、市道と一体的に整備することでさらなる活用を図る。

 廃止する市道は石畳風に舗装し、緑地との段差をなくして歩きやすくする。新たにベンチやトイレ、照明を設置するほか、四季を感じさせる樹木を植え、シンボルの噴水を中心とした開放的な広場へと再整備する。
 
 地域の古木・名木として「区民の誇りの木」に選定されたイチョウの木は残す。遊具などは置かず、参拝者や観光客、地域住民の憩いや交流の場となることを目指す。
 
 大型法要時の団体参拝バスや、修学旅行生のバスなどは、従来通り臨時に駐車できるようにする。
 
 以前より緑地の活用方法を模索していた同派に、京都駅前の活性化を目指す京都市が計画を申し入れ合意した。

 21日に東本願寺で行われた記者会見で、門川大作市長は「観光客や修学旅行生がまずお東さんの建物に触れ、歴史や文化を学ぶ出発点になれば」と話した。

 但馬弘宗務総長は「地域の賑わいに資する寺院でありたいと考え、合意した。参拝者の憩いの場としてはもちろん、地域住民にも広く利用してもらい、京都市の活性化にも貢献できれば」と述べた。

光り輝く双龍図奉納 大本山建仁寺

 臨済宗建仁寺派の大本山建仁寺法堂の天井図「双龍図」が「ジュエリー 絵画【ジャポニズム】」プロジェクトに選ばれ、同寺で作品の奉納式典が行われた。ブラックスピネル、マザー・オブ・パールなど時価 50 万円相当の天然石が使われた縦約20 ㎝、横約30 ㎝の作品で、100年以上色あせないという。
 
 日本のアニメや文化財を世界に広める目的で、ジュエリーカミネと大阪市立大学が共同研究で開 発。ガラス板に細かく砕いた宝石や金を特殊なのりで貼り付けて作成しており、一枚一枚手作業で作られている。これまで金閣寺や平等院へ手塚治虫の「火の鳥」なども奉納されており、建仁寺への奉納は2年前の「風神雷神図屏風」に続き、今回が2作目。
 
 川本博明宗務総長は「常設して皆さんに楽しんでいただこうと思う」と述べた。

ローマ教皇来日 日本の宗教界の役割は

 ローマ教皇フランシスコは24日、訪問先の広島平和記念公園に集まった日本の宗教者らと一人ずつ言葉を交わした。

 参加したのは、森川宏映天台座主、全日本仏教会会長の江川辰三曹洞宗管長、同次期会長の大谷光淳浄土真宗本願寺派門主、田中恆清神社本庁総長、庭野日鑛立正佼成会会長、鈴木穎一大本教主代理ら。大谷門主は「人々が互いの宗教を尊重して協力し、世界平和を目指す社会を作るために協力しましょう」と英語で呼びかけた。
 
 日本のカトリック信者は約 44 万人だが、世界には約13億人もいる。ローマ教皇の発信力は大きく、核廃絶を願う教皇フランシスコが唯一の戦争被爆国である日本で、どこまで言及するかに宗教界も注目していた。
 
 今回の来日で、教皇フランシスコは、歴代教皇 が容認してきた〝核抑止力〟を否定した。長崎爆心地公園でのスピーチで「核兵器は、今日の国際的また国家の安全保障への脅威に関してわたしたちを守ってくれるものではない」と踏み込んだ。続いて訪れた広島では「戦争のために原子力を使用することは、現代において犯罪以外の何ものでもない」と断じた。
 
 広島で14歳のときに被爆した梶本淑子さんは、教皇の前で自らの体験を語り、反核を訴えた。記者団には「教皇が核廃絶のメッセージを発することで、少しでも関心を持ってもらえるのでは」と期待を語った。
 
 広島に原爆が投下された1945年8月6日、投下の約2時間前に広島駅を通過していたという森川座主は「いかに科学が進歩しようとも、一瞬にして多くの人を殺すことを許してはならない」と強調。「科学で『いの ち』は作れない。我々の奥底には神仏がある。平和への願いを教皇とともに祈り続けたい」と思いを語った。森川座主は3年前にバチカンに赴き、教皇と面会。来日を要請した経緯がある。
 
 日本は来年、戦後75 年を迎える。教皇は歴史に学ぶことを訴え、「思い出し、ともに歩み、守ること」と呼びかけた。特に伝統教団は、先の大戦で戦争に加担した、消えない歴史がある。憲法や近隣諸国との関係、日米安全保障など、現代日本を取り巻く環境には「戦後」の課題がなおも山積する。
 
 今年8月の「比叡山宗教サミット32周年『世界平和祈りの集い』」で、森川座主は「暴力と憎悪の連鎖を断ち切り、互いが和とする協調の力で慈悲の心を育てねばなりません」と述べた。宗教は時に争いの契機ともなり 得るが、戦後日本の宗教界は「対話」と「協調」をもたらすことができる。
 
 教皇は言う。「過去と同じ過ちを繰り返さないために」。日本の宗教界にできることとは何か。我々も改めて考え、ともに歩みたい。(泉英明)

滋賀医大で「医の倫理」 宗教者が医学生らと討議

滋賀医大で「医の倫理」

宗教者が医学生らと討議

 

滋賀医科大学で、医学生や看護学生と外部の宗教者らが臨床現場の事例について語り合う「医の倫理」合同講義が今年も11日に開かれた。浄土真宗本願寺派僧侶の長倉伯博非常勤講師が提示した四つの事例をもとに、学生約180人と外部参加者約50人が24の班ごとに討議。緩和医療の現場で死と向き合うための心構えなどを学んだ。

本願寺派僧侶の早島理名誉教授が国立大学では先駆的な取り組みとして約15年前に開始し、現在は室寺義仁教授が引き継ぐ。医学科4年生の必須科目で、今年から看護学科1年生の必須科目にも加わった。早島名誉教授は「人は必ず死ぬ。医療が何もできなくなったとき、医療者として何ができるのかを外部の人たちと議論してほしい」と講義の意味を話す。

長倉講師は、「医療者が『患者さんに人生を味わうチャンスを作るのが仕事』という立場に立てば“医療の敗北”は無くなる。『生まれてきてよかった』と言ってもらえるにはどうするか」と呼び掛け、肺がんだった63歳の男性が、研究者として米国にいる一人息子から「お父さんの息子でよかった」と送ってきたメールに激怒した事例などを紹介した。

班ごとの討議は医学生と看護学生が議論を進め、外部参加者がアドバイスする形で進めた。肺がん男性の事例を討議した19班の学生らは「何もできなくなった役割の喪失が原因では」「死を突き付けられたことや、帰ってきてほしいという気持ちがあった」などの意見を交わした。また「若い世代は喪失感のイメージが湧かない」などの新たなテーマもあった。進行役を務めた医学科の堀川裕明さんは「外部の人たちと話すと、学生だけでは広がらない視点が出てくる」と語っていた。

今年の外部参加者は宗教者や医療関係者、記者などで、木邊顯慈真宗木辺派門主ら全国の僧侶や、龍谷大学大学院実践真宗学研究科の臨床宗教師研修受講者、本願寺派のビハーラ僧養成研修会の受講者も参加した。

両研修を同時に受講中の実践真宗学研究科2年生の山本顕生さんは「学生らは『生』に対していろんな意見を持つが、『死』にはあまり触れていないと感じ、死生観を持つことの大切さを話した。両研修では答えはないことを学んでいる。改めて『何で?』という問いを大切にしたいと考えた」と話していた。

日蓮宗 鈴木教授が教義の見直し訴え

日蓮宗

 

第49回近畿教区教化研究会議より

鈴木教授が教義の見直し訴え

 

日蓮宗近畿教区は8日、教化研究会議を大阪市内で行い、講師の鈴木隆泰山口県立大学教授(東京都善應院住職)が「仏教における『いのち』とは」をテーマに、霊魂を大事にする日本人に沿った日本仏教独自の教義解釈の再編を訴えた。

仏典を原典から読み下した鈴木教授は、比丘マールンキャープッタが「世界の謎全てが解決しないと安心できない」と霊魂や死後について釈尊に聞いた「毒矢の譬え」を取り上げ、「そのような疑問を持つことは覚りへの妨げになる」と釈尊が答えたことが、今の日本の仏教者を萎縮させているのではないかと問題提起した。

さらに、日本仏教が“誤解”の上に立っているのが、初転法輪における「諸法無我説」だという。全てに実態がないと説く仏教の基本と解説されるが、原典を読み解くと、正確には「五蘊非我」であるとした。原典では自己の本体・霊魂(アートマン)が五蘊以外にも存在する可能性を否定も肯定もしていないことを説明。楞伽経には、アートマン(自己の本体)=仏性=阿頼耶識=輪廻主体「いのち」=霊魂であることが、はっきりと示されていると述べた。

日本における仏教は、原典を大幅に誤解して解釈しているため、死後の世界を否定するかのように霊魂観を示していないと指摘。初期仏典のスッタニパータなどには、詳細な地獄の描写や、殺人鬼のアングリマーラが現世でリンチを受けて堕地獄を回避したという記述があり、仏教において「死後の世界」は大前提だと語った。また鈴木教授は「増支部経典には、何であれよく説かれたものは全て釈尊の直説(仏説)と記されている。『方便の力』に基づいて人々を救い、安心に向かわせる教えであれば、それは治療薬であり、『釈尊の直説』と見なすのが仏教の本来の特性だ」と述べた。その上で、従来から日本人が仏教に最も強く望んできたのは、除災招福や、死者の魂を浄化して祖先神として強化すること。その求めに応じ、また人を善導する方便としての日本の葬式仏教は、「釈尊の直説」に他ならないとした。

現代は「宗教離れ」といわれるが、鈴木教授は宗教の基本として、ロゴス(理論)に基づく大学教育、パトス(篤い信仰心)に基づく僧侶の修行、対象となるエートス(一般の気風)のうち、「現状はロゴスを前面に出せば失敗する。前面に出せないロゴスしかない点が、むしろ問題」と話した。日本の仏教(各宗祖師を含む)は、日本人の気風に応じて法を説き、今日まで発展・存続してきており、「エートスに着目し、時代や環境にも配慮して、それらに応じて教学(口ゴス)を再整備し、修行・布教(パトス)を実践していく必要がある」と“処方箋”を示した。

講演は、宗門大学で教学を学んできた受講生には新鮮な内容だったようだ。分科会では、「ロゴス再編までは参究は進まないものの、普段の通夜説教などで『善導』を試みてきたことが仏説につながるという説に大いに力付けられた」との意見も出ていた。

最終の全体会議では「宗教離れの中で、霊魂など見えないものを証明して語るには」との質問があり、鈴木教授は「見えないものを証明するのは難しい。しかし僧侶が死後の世界があることを確信し、魂・永遠のいのちがあると信じて安心を得て、死後の世界や霊魂の実在を堂々と説けばよい」と、自身の言葉や体によって証明することが肝要と語り、釈尊が説いた死後の世界の実存を信じて行学に励み、永遠のいのちを生きる僧侶が幸福度の高い生活を社会に示すことが大事だとした。