月別アーカイブ: 2020年12月

noteで連日記事公開 2020-2021年末年始

 こんにちは。宗教専門紙「文化時報」編集局です。

 年末年始に合わせ、文化時報の紙面で反響のあったインタビュー記事を連日、ブログサービス「note」で公開していきます。
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 期間は12月24日~1月11日です。
 公開予定記事やスケジュールは、以下をご覧ください。
 https://note.com/bunkajiho/n/nbd81a461045d

 よろしくお願いいたします。

持続化給付金 宗教法人はなぜ除外されたのか

 新型コロナウイルス対策で中小企業や個人事業主に支給される国の持続化給付金を巡り、宗教法人を支給対象にすべきかどうかという議論が起きた。全日本仏教会などが加盟する日本宗教連盟(岡田光央理事長)が、宗教法人も対象とするよう要望。政府・与党内で議論されたが、決定には至らなかった。政教分離の原則に抵触することが懸念されたとみられるが、果たして問題はそれだけなのだろうか。(大橋学修)

当座をしのぐ資金は必要

 持続化給付金の創設は4月7日の閣議で決定。事業者に加え、「法人税法別表第2に規定する法人」も特例として給付対象にすることも決まった。ところが、別表第2に規定される宗教法人は、例外として対象から除外された。

 日宗連の要望を受けて、「政府が新たに中小の宗教法人を対象に追加する方向で最終調整に入った」と、テレビ東京が5月14日に報道。同28日には共同通信などが、政府が宗教法人を対象に含める案を一時、検討していたものの、自民党内の反発で閣議決定から除外された―と伝えた。

 仏教界では、新型コロナウイルスの影響で葬儀や法要が相次ぎ中止・延期となり、多くの寺院が減収している。日宗連や全日仏には「切羽詰まっている」「持続化給付金の支給は助かる」などの声が寄せられていた。

 これまでも、過疎化や少子化によって寺院は存続が危ぶまれていたが、コロナ禍で危機が一気に加速することが懸念された。経営破綻に伴って不活動法人が増加し、宗教法人の不正利用が進むことも心配された。

 宗教法人が公益法人に規定されている以上、経済的に追い込まれた寺院にも、当座をしのぐ資金として持続化給付金を給付すべきだと求めたのが、日宗連の要望だった。

かえって不利?税制優遇の解除懸念

 持続化給付金への待望論が出る一方で、不安視する意見も多く上がった。中でも、持続化給付金の対象となることで、宗教法人に対する税制優遇措置が解かれるのではないかという懸念が強かった。

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(文化時報2020年6月13日号から再構成)
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【速報】法然上人「裸像」を調査 文化財級か

 浄土宗大本山百萬遍知恩寺(京都市左京区)が所蔵し、法然上人の裸像としては唯一現存するといわれる「張り子の御影」について、東京国立博物館が11日、調査を始めた。江戸期以前に制作された法然上人像が少ない中、遅くとも室町期の作とみられることが判明。文化財級の尊像と認定される可能性があるという。今後、CTスキャナーを使って内部調査などを行い、正確な年代を特定する。

 「張り子の御影」は、百萬遍知恩寺を実質的に開いた法然上人の門弟、勢観房源智上人(1183~1238)が造ったと伝わる。高さ47.9㌢、幅32.7㌢(膝部分)の座像で、頭部は高さ15.1㌢、幅11.9㌢。裸体は細部に至るまで精密に表現されており、正絹の黒衣(法衣)を着せて法主棟の内仏として奉安されている。学識者による調査は今回が初めて。

 調査に当たった東京国立博物館の浅見龍介学芸企画部企画課長によると、造形から鎌倉―室町期に制作された可能性が高いという。現存する法然上人像はこれまで、鎌倉期に制作された當麻寺(奈良県葛城市)のものが最も古いとされている。

 また、「張り子の御影」の名の通り、これまでは麻布に漆を塗って造る「脱活乾漆(だっかつかんしつ)」の技法が用いられていると考えられていたが、調査では木造の可能性があることも分かった。

 着せられていた黒衣にも特徴があり、仏像用に細工されたものではなく、人が着る衣と同じ縫製が行われていた。白衣や襦袢(じゅばん)、ふんどしまで着せていることが判明した。

 調査の様子を傍らで見守った福原隆善法主は「生きておられる法然上人のありのままの姿を表したのだろう。お顔から、若い頃の姿のように見える。比叡山を下りて間もない頃のように感じる」と語った。

(文化時報2020年12月16日号掲載前の速報)
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仏教は心の病院 生の意義は死から

 仏教は心の病院―。そのたとえが腑に落ちたという僧侶が、宮城県にいる。仙台市宮城野区の浄土宗慈恩寺住職、樋口法生氏。東日本大震災で多くの犠牲者を出した石巻市の出身で、10年近く遺族らに寄り添ってきた。「仏教は、待つ宗教。生きることで苦しみを感じた人を、いつでも受け入れる」。生きる意義は、死と向き合うからこそ見いだせるという。(大橋学修)

浄土宗慈恩寺住職・樋口法生氏


死者は守られないのか

 樋口氏は、石巻市の西光寺住職の次男として生まれた。学校の教師になる夢を持っていたが、「仏飯をいただいて育った上は、僧侶の資格を取って恩返しすべきだ」と父に説得され、大正大学仏教学部に進学した。父は前々住職の養子で、市役所職員や新聞記者として働きながら寺を守っていたという。

 「他のこともしてみたい」。そんな煮え切らない思いを抱えたまま、伝宗伝戒道場=用語解説=に入行。その直前、友人の運転する車で事故に遭い、重傷を負った。命を失ってもおかしくない大事故。「自分は守られた」と、人知を超えた存在からの恩恵を感じた。

 しかし、その思いは、東日本大震災を経験したことで、大きく変容した。

 石巻市内では多くの人々が身近な人を失い、住み慣れた家屋を流された。火葬場は使えず、移動もままならない状況で、遠く離れた別の火葬場に行かなければならなかった。土葬を余儀なくされる場合もあった。

 どのように生きればいいのか。誰もが真っ暗闇の中にいた。「命が助かった。信仰していたから守られた」。そんな声も聞いた。

 すると、疑問が湧き起こった。亡くなった人は、守られなかったのだろうか。守られるとは、どういうことか。亡くなった人と残された人の違いは何か―。

 「釈尊は、諸行無常であると説かれている。信仰があるから守られるとは言えない。祈りでなんとかなるのなら、なんとかしてくれ」

いつかは出会える

 亡くなった人も残された人も救われるのは、いずれは浄土で出会えるという「俱会一処=用語解説=」の教えだと、遺族と向き合うことで確信するようになった。

 「震災から9年を経た今も、遺族の中には一日に何度も気持ちが上下する不安定な人がいる。また会える、いつかは出会えるという思いが、唯一の明かりになり、せめてもの救いとなっている」

 震災や自死で残された遺族のために、法話会を定期的に開いている。涙を流したり、怒ったり。参加者からは、いろいろな思いがあふれる。同じ境遇の人同士が話をする場になるという、お寺が持つ可能性を感じている。

 「僧侶が思う以上に、教えは求められている」。多くの悲嘆と向き合ってきたからこそ、浄土宗の教えが現代にも生きることを確信している。

限りがあるから、換算できる

 新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が求められていたさなか、花園大学の佐々木閑教授の講演を動画投稿サイト「ユーチューブ」で聴いた。「仏教は心の病院」という言葉を聞き、「まさにその通り」と感じた。「これまで私が思い、行動してきたことを的確に表す言葉だった。お寺の存在意義を再確認した」

 心が健康な人は、仏教を求めないかもしれない。生きる力があれば、「無」や「空」といった教えに関心が向くかもしれない。ただ、人はいつ命を失うか分からない。「命の問題に直面したときは、念仏の教えでなければうまくいかない」と強調する。

 その上で、人間は生老病死の四苦に振り回される存在なのに、その事実から目を背けていると指摘。生きることの意義は、死と向き合うからこそ感じとれるのだという。

 樋口氏は言う。「死に向かって生きていると言われると、絶望するしかない。しかし寿命には限りがあり、限りがあるから時間に換算できる。だからこそ、時間を大切に過ごせるし、死を迎えても大丈夫だと思えるようになる」
        ◇
【用語解説】伝宗伝戒道場(でんしゅうでんかいどうじょう=浄土宗)
 僧階を持つ僧侶になるための道場。「加行」「加行道場」とも言う。

【用語解説】俱会一処(くえいっしょ=浄土系仏教)
 念仏の信仰に生きる人は、臨終後に浄土に生まれ、浄土の仏・菩薩たちと共に一つのところで出会えるという教え。

(文化時報2020年6月3日号から再構成)
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地域包括、終活で充実 カフェで「官仏連携」

 終活をキーワードに地域包括ケアシステム=用語解説=を充実させようという取り組みが、神奈川県厚木市で進んでいる。終活カウンセラーと公的機関、お寺が協力し、「お寺『終活カフェ』」を開催。「心、体、先の不安をケアできる交流の場」と位置付け、1年間で約30人がメンバー登録した。地域包括ケアシステムにお寺を活用する事例として注目を集めそうだ。

曹洞宗長谷寺で開かれた「お寺『終活カフェ』」=2019年10月、神奈川県厚木市

営業・宗教勧誘は行わない

 厚木市の住宅街にある曹洞宗長谷寺(ちょうこくじ)。約千年の歴史がありながら焼失を繰り返し、1993年に加藤英宗住職(51)が再建した。檀家を持たない一方で、ヨガや詩吟、坐禅会などの〝寺子屋〟に人が集まる。

 ここを会場に開く「お寺『終活カフェ』」で中心的な役割を果たしているのが、終活カウンセラー上級の資格を持つ「神奈川葬祭」企画営業部次長、髙橋良彦さん(56)。仕事で付き合いのあった長谷寺と厚木市南毛利地域包括支援センターをつないだ。

 カフェでは、営業活動や宗教勧誘を一切行わない。昨年6月に「地域の相談窓口『地域包括支援センター』ってなに?」をテーマに第1回を開催。以降は老人ホームの選び方やエンディングノートの活用法など、参加者から提案のあった講演会を開いてきた。

 加藤住職の法話や後半に行うカフェタイムも好評で、参加者は終活にまつわるさまざまな悩みや苦労話を語り合う。

 髙橋さんは「死生観にたけた宗教者が参加すれば、きちんとした地域包括ケアシステムが構築できる」と話している。

弔いを宗教に任せる

 髙橋さんは「終活に関する相談は、『死んだら自分はどうなるのか』と死生観に踏み込んでくる。医療・介護の専門職では対処が難しい」と話し、宗教者の役割に期待する。

 「お寺『終活カフェ』」は、お寺で開く流れが自然にできた。もともとは、市内の主婦が会員制交流サイト「フェイスブック」で始めた「老後を真剣に考える会」が出発点。ファミリーレストランで情報交換する内輪の勉強会で、そこに髙橋さんと長谷寺の関係者も参加していた。

 髙橋さんは「葬儀で後悔する人をなくしたい」との思いから、市内の地域包括支援センターと協力し、2016年から終活講座や相談会を行ってきた。「生き方や人生に関する悩みは、お寺が相談窓口になればいいのではないか」と話す。

カフェタイムでは、終活関連の話をざっくばらんに語り合う=2019年7月、神奈川県厚木市の曹洞宗長谷寺

 一方、地域包括支援センターは、住民から介護に関するよろず相談を受けており、市町村が設置主体となっている。公的機関として、宗教法人との協働には難しい面もあるが、お寺は安心できる会場で僧侶は心のケアの専門家、と位置付けている。

 厚木市南毛利地域包括支援センターの職員で保健師の鈴木瑞穂さん(37)は「お寺で話をしたい、聞きたいという需要は少なからずある。必要な方に支援が届くよう、カフェを通じて情報発信したい」と語る。

 お寺にとっても、メリットは大きい。長谷寺には、「お寺『終活カフェ』」への参加をきっかけに、ふらりと訪れる人や坐禅会に関心を持つ人が増えた。加藤住職は「地域に開かれていて、いろいろな専門家に相談できる環境を作るのが、本来のお寺の役割」と強調する。

 地域包括ケアシステムは高齢者の健康を扱うため、医療・介護を中心に構築されている。生前のケアは得意だが、死後の弔いまで目配りできているケースは少ない。弔いを宗教に任せれば、切れ目のない看取りによって、最期まで自分らしく生きるという地域包括ケアシステムの理念が達成される。

 新型コロナウイルスの影響で、カフェの開催は今年4月に予定されていた第7回が延期されたまま中断している。再開し「厚木モデル」として普及することが期待される。(主筆 小野木康雄)
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【用語解説】地域包括ケアシステム
誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らせる社会を目指し、厚生労働省が提唱している仕組み。医療機関と介護施設、自治会などが連携し、予防や生活支援を含めて一体的に高齢者を支える。団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに実現を図っている。

(文化時報2020年6月10日号から再構成)
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