月別アーカイブ: 2021年3月

はじまりは京都から 大谷大学、国際学部を新設

 真宗大谷派(東本願寺)の関係学校、大谷大学(京都市北区)は2021年4月、文学部国際文化学科を改組し、国際学部を新設する。スローガンは、「世界と共生したいあなたへ はじまりは京都から」。世界中から多くの観光客が訪れる観光都市・京都の特色を生かしながら、国際的なコミュニケーション能力などを身に付けた学生の育成を目指す。新学部スタートへの思いを木越康学長に聞いた。(編集委員 泉英明)

 木越康(きごし・やすし)1963 年2月、石川県生まれ。大谷大学大学院文学研究科博士後期課程(真宗学専攻)満期退学。大谷大学短期大学部助教授、同文学部教授などを経て2016 年4月に学長就任。著書に『ボランティアは親鸞の教えに反するのか』(法藏館)、『〈死者/生者〉論』(共著・ぺりかん社)など多数。金沢教区光專寺衆徒。

4学部制に移行

 《大谷大学は2018年度に社会学部と教育学部を設置し、文学部の単科大学から複数の学部を有する大学へ移行した。国際学部の新設は当初から構想されており、これでいよいよ4学部が出そろう》

──国際文化学科をベースに、4月から国際学部が新設されます。

 「文学部に社会学部と教育学部を加えて3学部にしたことは『伝統を、社会に開き、未来へつなぐ』という大きなコンセプトに基づいていました。仏教を中心とした伝統を現代で社会化し、教育という未来を見据えたのです。今回は未来から、さらに世界を視野に入れようということです。国際学部の新設で、目指してきた形がいったん整います」

 「現行の国際文化学科は定員90人ですが、学部化にあたり定員を100人に増やします。4学年で40人増えますが、短期大学部を閉鎖したので全体の定員数はほぼ変わりません。4学部制が大学規模にも適していると考えています」

 《国際学部には「英語コミュニケーションコース」「欧米文化コース」「アジア文化コース」の3コースがある。語学の強化のみならず、仏教を基軸に置く大学として、異文化への理解を深めることに特色を持つ》

──新学部設置に向けた準備が進んでいます。

 「1990年代から国際文化学科を有してきたので、ゼロからのスタートではありません。すでに教員スタッフや留学先も確保できています。文部科学省からも大きな指摘はありません」

 「『はじまりは京都から』と銘打って、京都という国際的な環境の中で学ぶことが特長の一つです。2年生からは留学なども積極的に行いますが、1年生は京都という土地を生かしたグローバル社会との出会いを経験してもらいます」

 「新学部長にお願いしているのは、国際的な異文化理解を深めることです。宗教を含めた他者理解は、仏教徒にとってはしやすいのではないでしょうか。日本には『信じる宗教がない』という感覚を持つ人が多いかもしれませんが、国際社会では相手が大事にする宗教を含めた他者理解が必要になります。仏教を根幹に置きながら、他の宗教とも出会うような学びが必要です」

「~ファースト」はあり得ない

 《新型コロナウイルスの影響で、各大学は前期にリモート授業などを余儀なくされるなど、対応に追われている。大谷大学も例外ではなく、新入生らのサポートを実施した》

国際学部新設の記者会見に臨む木越学長(右)=2020年9月16日

──コロナ禍での新学部開設となりそうです。

 「一般的な注意事項に従い、一つずつ注意しながら行うしかありません。全体が苦しんでいる時には、全体でどう立ち上がるかを発信し、対話の態度を取り続けねばなりません。国際社会では『~ファースト』という言葉がありますが、仏教的視点から見ると『~ファースト』というような考え方にはなりません。このような視点を持った学生を育てたいですね」

 「2020年はリモート授業を取り入れましたが、教員も学生も、ハードもソフトも全く準備できていない状態でした。学生が混乱したまま付いてこられず、前期が終わってしまったのではないかと危惧しています。もしオンライン授業を一部だけでも継続するなら、ハードをきちんと整える備えが必要です」

 「精神的な部分の心配もあります。『コロナ鬱』ともいわれ始めていますが、閉じこもってしまった日常が、人間の精神にどんな影響を及ぼすのかは分かりません。本学は1年生の最初から指導教員がいて、メールアドレスを渡すことで、学生と教員が個別にやり取りできる関係を築いています。6月からは登校可能日を設けて、大学で指導教員の授業を受ける機会も作りました。ウェブ環境を整える支援については、一律5万円の準備金を支給しています」

仏教は揺るぎない柱

── 国際学部が開設される2021年度は、開学120周年で、10年間のグランドデザインの最終年度となる節目の年です。

 「現在のスローガン『Be Real 寄りそう知性』は、使い始めて4年ほどです。私自身、いまだに、この言葉の意味を考えながらかじ取りを行っています。今後も方針は大きく変わることはないでしょう。また、『寄りそう知性』という言葉は国際社会の中で大切な視点です。新たなグランドデザインも、これまでのコンセプトをより強く展開するような形で発信されるのではないでしょうか」

──大谷派の関係学校としては、どのように展望されていますか。

 「大谷大学は全ての学部で大谷派の教師資格を取得することが可能です。現代の住職は兼業が前提になる場合が多い。例えば社会学部で公務員を目指しながら、あるいは教育学部で教員免許を取得しながら、大谷派の教師資格も有することができます。これが複数学部化の狙いの一つでもあります。最初は宗門内にも学部を増やすことに心配の声がありましたが、仏教を背景にしながらの複数学部化を経て、大学は活性化しています」

 「『Be Real』という言葉を生み出す時、『もっと仏教を前面に押し出すべきだ』という議論もありました。仏教は大谷大学の揺るぎない柱です。新しいグランドデザインにも、この精神は継承されるでしょうし、もっと仏教らしい大学の在り方の実現可能な形を考えることになるでしょうね」

(文化時報2020年9月19日号から再構成)
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コロナ禍に学ぶ僧侶たち オンライン駆使「Zoom安居」

 新型コロナウイルスの感染拡大に寺院や僧侶がどう向き合うかを考えるオンライン学習会「Zoom安居(あんご) 」が順調に回を重ねている。文化時報紙上セミナー講師の鵜飼秀徳氏もスタッフやパネリストとして参加。僧俗や宗派を問わず、さまざまな切り口で寺院と僧侶の未来を見据えようとしている。

「Zoom安居」に登壇した鵜飼秀徳氏


チャット機能で議論

 「新型コロナウイルスは、人々の生活を大きく変えた。大半は仕事が減り、収入が減少した。それは、信者からお布施を預かる私たち僧侶も同じだ」

 司会を務める浄土宗玄向寺(長野県松本市)の荻須真尚副住職が、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を通じて参加者らに語り掛けた。7月21日の第3回Zoom安居。「コロナで変容したお布施について」をテーマに、行政書士で葬祭カウンセラーの勝(すぐれ)桂子氏と鵜飼氏が対談した。

 勝氏は、コロナ禍で法事の中止や延期が相次いだことについて「多くの人にとって、供養はイベントにすぎなかった」との見方を示し、鵜飼氏も「これまでの宗教活動に、宗教性は存在していたのか」と疑問を呈した。

 対談の最中にも、チャット機能を使って参加者が質問や意見を入力していく。その中から「オンライン法要はお布施に直結しないのではないか」という意見を、荻須副住職が紹介した。

 勝氏は「法要をやってほしい人は、自分から香典を包む。そもそもお坊さんには、お布施がなければ法要をしないのかと問いたい」と応じ、鵜飼氏は「仏教は伝来して以来、常に最新のツールを駆使して社会をリードし、新しい価値を生み出してきた。それが、戦後からはなぜか古典回帰している」と語り、オンライン法要の導入に対して消極的になることを批判した。

 さらに鵜飼氏は「東日本大震災でも同様のケースが見られたが、コロナ禍で減ったお布施は元に戻らないのではないか」と指摘。一方で勝氏は「気持ちをどれだけ救ったかで、お気持ちの額は決まる。オンラインだからといって安くする必要は全くない」と強調した。

鵜飼氏と対談した勝桂子氏

僧侶の踏ん張り時

 Zoom安居は無料で開催。政府の緊急事態宣言で社会が緊迫していた5月、浄土宗一向寺(栃木県佐野市)の東好章住職が企画し、荻須副住職らに呼び掛けて始まった。趣旨に賛同する僧侶らが続々と申し込み、5月21日の第1回には100人が参加した。

 第2回は6月29日、「コロナ禍における差別問題とグリーフ(悲嘆)ケア」をテーマに行われた。福島第1原発事故を巡り、放射能への不安や福島県民への差別が生じたこととの類似点を探り、「コロナ差別」と言われる状況を読み解こうとした。また、コロナ禍で十分な別れができないまま故人を葬送する遺族へのケアについても考えた。

 荻須副住職は「非常時に寺院が直面した問題は、平常時からあって気付かなかったか、小さなこととして捉えていたものだ」と話す。

 例えば葬儀の簡素化など、以前から「寺離れ」や「宗教離れ」と言われてきた状況は、コロナ禍で加速し、終息後も元に戻らない可能性が高いと考えている。

 荻須副住職は「コロナ禍は、寺院・僧侶の踏ん張り時。いま何をすべきかを考え、実践するための勉強会として、Zoom安居を継続したい」と話している。

(文化時報2020年8月8日号から再構成)
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膝交えて聞法を 真宗大谷派門首・新門が記者会見

 2020年7月1日に就任した真宗大谷派の大谷暢裕第26代門首(68、釋修如)と、長男の裕新門(34、釋慶如)が同30日、真宗本廟(東本願寺、京都市下京区)の宮御殿でそろって会見に臨み、「門徒の皆さまと膝を交えながら一緒に聞法し、800年守られてきた浄土真宗の教えが尽きぬよう、一生懸命尽くしたい」と抱負を語った。

 暢裕門首は暢顯前門(90)のいとこ。京都市生まれで、1歳のときに南米開教区の開教使だった父・暢慶氏とブラジルに渡った。サンパウロ大学物理学部学士課程卒。航空技術研究所に勤務し、物理学博士号を持つ。2011年に鍵役・開教司教に就任し、14年に門首後継者に選定された。

 裕新門はサンパウロ大学分子学科卒。東京大学大学院で数理科学を学び、博士号を取得し、現在は大谷大学大学院真宗学専攻修士課程に在籍している。17年に鍵役に就任。暢裕門首の就任時に、補佐役となる新門と開教司教に就いた。

 両門は共にブラジル国籍。暢裕門首は「浄土真宗は国や人種、性別、年齢などに関わりなく、平等の世界を説く教え。何が違っていても、生きとし生ける衆生に、お念仏を届けたい」と力を込めた。また6月30日に退任した暢顯前門について、「暢顯前門の後ろ姿を一生の目標として歩んでいく」と思いを語った。

 裕新門は「ブラジル育ちという教団外部の視点を生かし、中の価値観を問い直しながら、海外布教に尽力したい」と述べた。

 会見は当初、就任翌日に開かれる予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期され、御真影の厨子を開く御親開など、就退任の行事も中止となった。

 暢裕門首は就任から約1カ月間を振り返り、「差別・偏見を生み出す人間のありようを見過ごさない視点が大切」と、新型コロナウイルスに揺れる社会へ警鐘を鳴らした。

 また宗派の礎であり、2021年が成立40年となる宗憲を「大谷派の大事なベース」と表現。信仰運動である同朋会運動=用語解説=を「世界の誰にでも開かれ、平等の教えを伝える運動」と示した。

南無阿弥陀仏を世界中に 暢裕門首

──門首就任への率直な思いと、就任1カ月で感じたことをお聞かせください。

 暢裕門首「門徒の皆さまと膝を交えながら一緒に聞法し、800年大事に守られてきた浄土真宗の教えが尽きぬよう、一生懸命尽くしたいと思います。7月28日に門首となって初めて、宗祖親鸞聖人の命日法要に臨み、御真影の扉を開かせていただきました。『よろしくお願いします』と頭を下げる気持ちでした」

──目標はありますか。ブラジルでの経験をどのように宗門に生かしたいですか。

 暢裕門首「門首に就任するにあたって一番大切な経験は、毎朝の晨朝(じんじょう)をはじめ、宗派の法要で大谷暢顯前門の後ろ姿を拝見させていただいたこと。光り輝くようでした。その後ろ姿を一生の目標としたい」

 「一番大事なのは、私も真宗門徒の一人であるということ。皆さまと一緒に聞法を続けることが大事な仕事です。もう一つは、大谷派宗憲を大事に守りながら、まっすぐに歩んでいくことです」

 「『ブラジル国籍だから』という特別な目標はありません。浄土真宗の教えは、国や人種、性別、年齢などに関わりなく、平等の世界を説いています。南無阿弥陀仏を世界中に届けるという大谷派のビジョンは変わりません。生きとし生ける衆生に、お念仏を届けたいと願っています」

 裕新門「私はブラジルの生まれで、国籍もブラジルです。開かれた浄土真宗の教えの下で、ブラジル人として精いっぱい務めたい。開教使だった祖父・大谷暢慶がブラジルで築いたご縁を忘れずにいたいです」

 「新門の勤めを果たすとともに、開教司教にも就任したので、海外のご門徒さんとの交流を深めたい。誰とでも膝を突き合わせて聞法する姿勢は、日本においても欠かせません」

科学と宗教、対立しない 裕新門

──2014年に後継者となり、日本に来られてからの思いを。

 暢裕門首「大切してきたのは、皆さんと一緒に聞法すること。その次は声明。儀式もしっかりと習う。この3点です。その他に、書道の稽古をしています」

 「国内の別院を巡って、日本は広い国だと感じました。その土地に合った食べ物があり、それぞれが大事にしているものを持ち続け、皆が同じように南無阿弥陀仏を唱える。ありがたいことです」

──科学と宗教の役割の違いは。

 暢裕門首「科学は人間が便利に生きるためのツール。一方、科学技術が発達しても、お釈迦さまの時代から何ら変わらず、人は生老病死の日々を生きています。科学技術を使う人の命を支えるのは、宗教心です」

 裕新門「科学と宗教は、どちらも真理を追究します。科学は人の外側を見ています。宗教は、苦しむ人間として生まれ、どう生きるかを課題としています。二つは対立しません」

──新型コロナウイルス感染症についての所感を。

 暢裕門首「差別や偏見を生み出す人間のありようを見過ごさないという視点が大切です。あらゆる人々を尊び、御同朋御同行の精神を一生懸命伝えることが、宗教者にできることです。宗派としては、『ウィズコロナ』の時代で、新しいテクノロジーに柔軟に対応する心構えが大切でしょう」

──大谷派の教えや浄土真宗についての思いは。

 暢裕門首「『私がこのままで助かる教えが南無阿弥陀仏』ということが第一。第二は『私の一生を支えていてくれるのはご縁』ということ。三番目は、『皆が平等である』こと。親鸞聖人をお手本とし、日々、正直に生きることを学んでいかねばなりません」

 裕新門「浄土真宗の特長は、絶対他力の教えではないでしょうか。如来に帰依することこそ、どんな人にも開かれる救済の道だといただいています」

──教団問題=用語解説=と門首の役割について、どのようにお考えでしょう。

 暢裕門首「教団問題が起こった頃のことは直接知りません。ただ、問題を通して成立した現在の大谷派の宗憲を大事なベースとして、何事も宗憲を基に門首の仕事を精いっぱい果たしたいと考えています」

──大谷派の教化活動のベースには同朋会運動があります。

 暢裕門首「同朋会運動は信仰運動です。同朋会運動を通して、世界の誰にでも開かれた平等の教えを皆さんと聞法しながら南無阿弥陀仏を伝えていく。その働きが世界平和につながってほしいと願っています」

──宗教にとって難しい時代です。求められる宗門になるには何が必要でしょう。

 暢裕門首「まずは子どもの宗教心を育てることでしょう。生きとし生ける者が平等で、『皆が助からないと私も助からない』ということを伝えたならば、十数年先に互いを尊ぶ社会になります。これは私自身が子どもの頃にブラジルへ渡り、実感したことです」

 裕新門「念仏者が生まれる場を作ることです。教えに出遇うとは何か、どういう形で伝えるべきかを考える必要があります」


        
【用語解説】同朋会運動(どうぼうかいうんどう=真宗大谷派)
 1961年の宗祖親鸞聖人700回御遠忌法要を機縁に、その翌年に当時の訓覇信雄宗務総長によって提唱された信仰運動。「家の宗教から個の自覚へ」というスローガンが掲げられた。

【用語解説】教団問題(真宗大谷派)
 1969(昭和44)年、当時の大谷光暢法主が、内局の承認を得ずに管長職を長男の光紹氏に譲渡すると発表した「開申事件」を発端とする騒動。「同朋会運動」を推進する改革派と、大谷家や大谷家を擁護する保守派が対立し、後継者が次々と離脱した。最終的に光暢法主の三男、暢顯氏が96年に門首に就任し、沈静化した。〝お東紛争〟とも呼ばれる。

(文化時報2020年8月5日号から再構成)
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居場所づくりに宗教者協力 西成高校「となりカフェ」

 大阪府立西成高校(大阪市西成区)で生徒らの居場所となっている「となりカフェ」の運営に、金光教大阪センター(若林正信所長)が協力している。困難を抱える生徒らに、家庭でも学校でもない「サードプレイス(第三の場所)」を提供し、ドロップアウトを防ごうという取り組み。金光教の宗教者らが神前のおさがりとして食品を提供し、傾聴に当たっている。(主筆 小野木康雄)

西成高校の「となりカフェ」で、生徒の飲み物を作る金光教教師ら

 7月9日の昼休み。チャイムが鳴るとすぐ、男子生徒が駆け込んできた。「俺、きょう昼飯ないねん」。炊きたてのご飯をよそい、自分でおにぎりを作り始めた。

 となりカフェは校舎2階の相談室で、放課後を中心に月5回ほどオープン。食事を提供する目的で、昼休みや始業前に開くこともある。困窮家庭の子、ルーツが外国にある子、性的少数者の子。介護など家族の世話をする〝ヤングケアラー〟も少なくない。生きづらさを抱える生徒にとっては、等身大の自分でいられる貴重な居場所だ。

 1年の頃からカフェに通う3年の男子生徒(18)は、外見にコンプレックスがあって、人と接するのが苦手だという。それでも「ここにいる大人はフレンドリーで、区別なく優しく会話してくれる」。自分から話し掛ける勇気をもらい、友人ができたと笑顔で語った。

教会が後方支援

 となりカフェは、若者支援に携わる一般社団法人「officeドーナツトーク」(田中俊英代表)が2012年秋から行っている。同社団のメンバーに、神職に当たる金光教教師がいた縁で、金光教大阪センターが2019年5月から協力している。

 月例祭などで神前に供えられる食品を支援団体に送る「おさがりねっと」を構築。中近畿教区(大阪府、奈良県、和歌山県)の約20教会がサポーターとなり、大阪センターが事務局として物資の需給を調整する。となりカフェではお米が必要とされることが多く、9日には無洗米5㌔を贈った。

 また、中近畿教区青年室に所属する若手の金光教教師が月1回、活動を手伝う。保護者でも教職員でもない「第三の大人」として、同社団のスタッフと協働している。

 布教が目的ではない。金光教には、信者であるかどうかを問わず「皆、神の氏子」という考え方がある。教会から現場に出て、困っている若者を助け、学びを深めるための活動だ。

昼休みには炊き立てのご飯も提供

温かい目線で

 西成高校生徒支援室室長の森ゆみ子教諭(49)によると、となりカフェを設けたきっかけは、ある女子生徒が「家にキャベツしか食べ物がない」と語ったことだった。生徒らの遅刻や居眠りの背景に、貧困をはじめとするさまざまな困難が浮かび上がった。

 「成績を付ける教員と付けられる生徒という上下関係から離れて、ほっとできる居場所が必要」。そう考えて、カフェの運営を外部に任せ、教員がめったに寄り付かないようにした。勉強に向かうハードルを下げる授業や専門職との連携など、さまざまな取り組みと合わせて、中退率を下げることにもつながった。

 9日午後3時半。放課後のカフェにも、生徒が代わる代わる訪れた。ギターを弾いたり、ボードゲームに興じたり、おしゃべりをしたり。金光教教師とスタッフらは、生徒の飲み物を作りながら、さりげなく声を掛けて会話に入っていく。深刻な相談があれば、別室で対応するという。

 「officeドーナツトーク」の精神保健福祉士、奥田紗穂さん(30)は、金光教教師について「宗教者ならではの温かい目線で生徒に接してくれるし、思いが伝わってくる。今後も手伝いに来てほしい」と語る。

 金光教教師の青山信明さん(37)は「通ううちに、青少年と接することに慣れてきた。この経験を教会での対応につなげたい」。白神ナナさん(22)は「こちらが高校生から元気をもらえる。宗教者としての視野が広がり、成長できる」と話した。

オープン前には廊下に看板が出される

(文化時報2020年7月22日号から再構成)
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