曹洞宗慶昌院 行政書士の勝桂子氏が講演

曹洞宗慶昌院

 

行政書士の勝桂子氏が講演

寺を家族より頼れる存在に

 

曹洞宗慶昌院(京都府向日市、山路純正住職)は8日、盂蘭盆大法会を営み、行政書士の勝桂子氏が特別講演を行った。(写真)同寺では「お寺の終活講座」と題して、これまでも終末医療や認知症問題の専門家を講師に、檀信徒に役立つ講座を開催している。

今回は遺言、相続、死後の事務委任など実務の視点から、「お寺は、家族より頼れる親戚代わり~お寺を看とりステーションにしよう」と題して、今後、期待される寺院の役割について話した。

勝氏は、近所同士の付き合いや、子や孫との関係の中で笑顔ある老後を迎えることのできた50年前と比べ、現在は老人が孤立している現状を述べ、教会に通う習慣のある欧米では高齢者が孤立していない状況を紹介。その上で、「寺院の多くは日本経済の右肩上がりの時代に、かつて行っていた人生相談のような役目をやめてしまったことが、檀信徒とお寺との関係がだめになった原因。そのことを反省し、本来の寺院の役割を取りもどそうという動きがある。人生の終盤にいかに生きるべきかを考えるためにも、いいお寺を見つけて、きちんとお寺で隠居時代を過ごしましょう」と訴えた。

江戸時代に役所の機能を果たしていた寺院のように、悩み相談や、終活における手続きなどを委託し、万が一の時に子どもたちがすぐ親元にもどれない場合、寺院が緊急連絡先となる“看とりステーション”とすることも提案。「親族以外が看とるということに、行政がまだ慣れておらず、われわれ市民の力で、地域で見守り、地域で看とれる仕組みを作っていくことが大事」と提言した。

寺院に縁のある人同士での関係を成り立たせ、檀信徒は生死の話や悩み事を共有し、菩提寺住職は緊急時に病院などに駆け付けて傾聴を行い、不安を解消する。そして万が一の時の世話もすることで、檀信徒は世話になった寺院へ残余財産を預け、富裕層からの遺産で困窮者の看とりができるなどの利点を勝氏は挙げ、「かつての頼母子講のように、顔を見知った者同士で住職と話をする方が今の時代は安心で、慈悲にあふれるエンディングを迎えることができる」と話した。

講演では終活に関して、「緊急連絡先を菩提寺にし、葬儀や墓じまいなどの死後事務をお寺に頼み、公正証書遺言を作りましょう」「尊厳死宣言をしたなら、どのような医療を頼みたいのかを具体的に書いておくべき」など具体的アドバイスも行い、「住職や檀信徒が話し合い、経験した知識を寺院に蓄積し、地域の皆で安心できる仕組みを寺院を中心に作っていくべき」とも呼び掛けた。