曹洞宗 第28回總和会全国大会 過疎問題のシンポジウムを開催

曹洞宗 第28回總和会全国大会

 

過疎問題のシンポジウムを開催

パネリスト4人が課題や現状を報告

 

曹洞宗の宗政会派・總和会(会長=鬼生田俊英宗務総長)は8日、「第28回總和会全国大会」を曹洞宗檀信徒会館で開催し、全国から約140人の会員が集まった。今回は従来の大会と趣向を変え、各地からの意見発表の代わりに、鬼生田内局が推進する「過疎問題への対応」の一助とすべく、過疎問題に対する講演とシンポジウムを開催。過疎地の生の声を聞きながら、過疎問題への研鑽を深めた。

今年11月2~5日には大本山總持寺の能登から横浜鶴見への本山移転を英断した本山独住第4世・石川素童禅師100回御遠忌が営まれる。江川辰三大本山總持寺貫首は、「石川禅師さまは法系上、老衲の3代前の師僧にあたり、100回御遠忌をお勤めできることのありがたさをかみしめている。石川禅師さまは未来を見通すことの重要性を示しておられる。このことを、私たち宗門に生きるものは、常に覚えておかなければならない」と開会式で垂示した。

鬼生田内局は“竿頭の先に未来をひらく”をスローガンに掲げているが、鬼生田会長は「仏法の尊さを未来へつなぎ、宗門の未来、人心の安寧を図るため、自らが百尺竿頭の先に歩みを進めなければならない」との決意を改めて示した。

祝辞では石附周行總持寺副貫首が、2024年に迎える瑩山紹瑾禅師700回大遠忌に触れ、「瑩山禅師さまの遺偈の結句は『法堂上に鍬を挿む人を見る』だった。時代において難題に遭うが、それぞれの地域、それぞれの役割の中で、鍬をさし挟む勇気と歩みが大事」と語った。

また乙川暎元總持寺監院は、1907(明治40)年の本山の鶴見移転に際して、境内を寄付した成願寺と、移転当時の主要な建物となった放光堂と虎嘯窟を寄付した山形の總穏寺の顕彰碑を建立したことを報告。「御移転に際しての多大な功績を長く心に刻むためにも、顕彰碑を建てさせていただいた」と挨拶。さらに石橋晋哉参議は、總和会での議論が宗門の発展につながることを祈念した。

講演には、鵜飼秀徳正覚寺副住職(浄土宗)が登壇し、「寺院消滅時代を迎えて~人口減少時代の寺院環境」と題して話した。

「宗門寺院における過疎化について」をテーマとしたシンポジウムは、曹洞宗総合研究センターの清野宏道専任研究員がコーディネーターを務め、梅本実道氏(熊本県支部長)、西川良英氏(福島県支部長)、鵜飼氏、そして中村見自伝道部長(過疎対策準備室室長)が登壇。

海に囲まれた熊本県天草市五和町に自坊のある梅本氏は、人口減少が著しい地元の檀信徒の目線と、寺院側の目線の違いを紹介。さらに葬儀の小規模化や直葬などが増加し、かつて根付いていた互助の関係が崩壊し、中規模寺院も護持が難しくなってきた現状を説明した。福島県石川郡玉川村の村会議員を務める西川氏は、良識ある僧侶の育成の大切さを訴え、地域社会や檀信徒との密接な関わりの中で生きる寺院のあり方についても触れた。

鵜飼氏は寺院のあり方として地域や社会との縁のつながりの重要性を説き、過疎問題への対応として宗門などの垣根を超えた交流や情報交換の必要性を訴えた。また、中村伝道部長は4月から立ち上がった「過疎地域等における宗門寺院の問題に関する対策準備室」による島根、北海道、富山での現地視察と、地元寺院との懇談会の様子をつぶさに報告した。