浄土宗総合研究所 “僧侶の聖性”いかに保つか

浄土宗総合研究所

 

“僧侶の聖性”いかに保つか

信仰と規制の両面で

 

浄土宗総合研究所は第39回シンポジウムを京都宗務庁講堂で12日に開き、聖性を保った僧侶のあり方について話し合った。(写真)

テーマは「あるべき僧侶の姿を目指して」。総合研究所がまとめた『浄土宗僧侶生活訓』の試案を初めて公開し、僧侶の日常生活を改めて考えた。

パネラーの松岡玄龍布教委員会委員長は、檀家制度が僧侶の怠慢を招いたことや、肉食妻帯が可能になったことで僧侶が職業としての性質を帯びたことなどを挙げ、布教伝道が主体となっていないことが僧侶に対する信頼低下につながっていると語った。

井野周隆総合研究所研究員は「他者に寄り添うことが僧侶の信頼回復への第1歩」とし、上野忠昭南海教区教化団長は「円頓戒を自行化他の側面から実践する心構えが必要であり、修行と布施が僧侶のアイデンティティーとなることで信頼を得る」と話した。

一方、今岡達雄総合研究所副所長は、浄土宗僧侶の0.7%が信頼を低下させる行動を起こしていることを示し、「浄土宗というサンガと社会との接点の部分で問題が起こるのなら、その点を何とかしなければならない」と規制の必要性を指摘した。

公表された『生活訓』の試案は、僧侶として取り組むべきことや慎むべきことなど、現代僧侶のための12ヵ条からなる。併せて各項目について、社会の人々の視点を意識して解説している。シンポに参加した齊藤隆信佛教大学教授は「発表された『生活訓』の解説は、利他の部分ばかりが示されている。伝宗伝戒で円頓戒を受けていることを忘れてはならない。戒の中に示される菩薩行の一環として行うのだから、社会貢献活動は自行。信仰と社会貢献活動の関係性を示さなければならない」と話していた。

浄土宗では、問題行動を起こす僧侶の存在が、全体に対する社会的評価を下げ、布教伝道の妨げになっていることに危機感を抱いている。2013年に対応を模索するプロジェクトを総合研究所に立ち上げ、今回のシンポに至った。議論の中では、〝僧侶の聖性〟を保つためには信仰に裏付けされた社会貢献活動などを促す方向性と、社会問題となる行動を実質的に制限する方向性があることが明らかになった。

パネルディスカッションのコーディネーターを務めた齊藤舜健総合研究所主任研究員は「『生活訓』をまとめようとすると、どうしても信仰に基づいた精神論が主体になる。一方で、一部の僧侶による問題行動が全体の信頼低下を招くのであれば、その部分を抑制することが必要になる。今回のシンポで、それが明確になった」と話していた。