ラオスで仏像修復20年 身延山大学、技術伝承

 日蓮宗の宗門学校、身延山大学が、ラオスのルアンパバーン世界文化遺産地域における仏像修復事業を立ち上げてから、今年で20周年の節目を迎えた。戦災で破壊された仏像を元の姿に戻し、技術を伝承しようという息の長い取り組みだ。

ラオス・ワット・アーバイ寺院で行われた修復作業(身延山大学提供)

 ラオスはインドシナ半島の内陸に位置する人口約650万人の国で、首都はタイ国境のビエンチャン。男性のほとんどが一度は出家して僧堂生活を送るといい、国民の多くは上座部仏教をあつく信仰している。

 19世紀はフランスの支配下にあり、20世紀になっても旧日本軍の進駐やベトナム戦争の主戦場になるなど、長く戦乱が続いた。1975年の建国後も、戦災復興に労を費やし、仏像の修復技術が絶たれていたという。
 
 修復事業が始まったのは、ラオスで教育支援活動を行っていた超宗派のBAC仏教救援センター(伊藤佳通理事長)から、仏像群の損傷が著しいと知らされたのがきっかけ。柳本伊左雄・仏教芸術専攻特任教授は「壊れた仏像を目の当たりにしたとき、同じ仏教徒として見過ごせないと責任を感じ、行動に移した」と話す。

現地の僧侶と身延山大学仏像制作修復室のメンバーら。「同じ仏教徒として見過ごせない」との思いで協力する

 2000年にルアンパバーン地域の36カ寺で調査を行い、仏像の素材や彩色、彫刻や技法についても研究を重ねた。翌01年にはラオス情報文化省と協定を結び、修復活動を本格化させた。
 
 これまで修復した仏像は74体にのぼり、調査記録と修復記録を作成している。2019年度は、ブロンズ1体、木彫3体、約4㍍の漆喰仏の金箔貼りを手掛けてきた。
 
 持田日勇学長は「崇拝の対象である仏像が修復されたことはもとより、世界に向けてラオスの仏教文化を発信し、国の発展に微力ながら貢献できたのではないかと感じている。事業が本学の誇れる特色となったこともありがたく思っている」と振り返る。
 
 柳本特任教授は「これまで修復活動をご支援くださった方々のためにも技術を高め、日本とラオスの両国で技術伝承に励みたい」と、事業継続と発展を誓っている。

 2月19日にはラオスのビスンナラート寺院で、身延山大学とルアンパバーン仏教連盟が合同で法要を開催。新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する直前のタイミングで実現した。持田学長をはじめ、総本山身延山久遠寺の僧侶らと現地の僧侶らが出仕したという。

(文化時報2020年2月8日号から再構成)
(購読のお申し込みは0800-600-2668またはお問い合わせフォーム