災害対応で宗教と協力、社協の4割に 寺社の避難所は倍増

 災害対応を経験した全国の社会福祉協議会のうち約4割が、宗教団体のボランティアを受け入れていたことが、稲場圭信大阪大学大学院教授らの研究グループによる調査で明らかになった。自治体が協定を結び避難所に指定した寺社などの宗教施設が6年間で倍増したことも分かった。災害時における宗教と行政、社協の連携が進んでいる。

調査結果を発表する稲場圭信大阪大学大学院教授(右)。左は研究分担者の川端亮教授=2020年3月9日


 今年1~2月、全国の1826社協に聞き取り調査を実施し、794社協から回答を得た。

 それによると、災害対応に当たった経験のある321社協のうち、41.8%にあたる134社協が宗教団体によるボランティアを受け入れていた。

 受け入れた宗教団体の活動について「満足」と回答した社協は8割にのぼり、理由として「職員が対応できない危険な作業を、宗教者が率先してこなしてくれた」などの声があった。

 一方、宗教団体のボランティアを受け入れなかった103社協については、宗教団体からの申し出がなかったという理由が8割を占めた。「宗教色を前面に出していたから」が2.9%、「政教分離の考えから」が1.9%と、宗教を理由に受け入れを断ったケースは4.8%にとどまった。

 さらに、行政と宗教団体の連携状況についても2014年以来6年ぶりに調査を行い、全国の1741自治体に聞き取り調査。自治体と災害時協定を結び指定避難所となっていた宗教施設数は、14年時点の272カ所から661カ所と、約2.4倍に増加した。

 宗教団体と災害時協定を結ぶ自治体数も、95自治体から121自治体に増えた。

 宗教団体の持つ物資や人的資源は、災害対応において大きな強みとなる。稲場教授は「宗教と行政、社協の災害時連携は、今後さらに拡大するだろう」と予測している。

特定の宗教・宗派を利するわけではない

 自治体や社会福祉協議会が、災害の救援期に宗教者や宗教施設に協力を求める背景には、東日本大震災の教訓がある。

 稲場圭信大阪大学大学院教授らの調べによると、震災では少なくとも100カ所の宗教施設が緊急避難所として開放された。津波による浸水被害を受けた学校や公民館の代わりに高台の神社が住民を救った例や、約3カ月間にわたり300人以上もの避難者を受け入れた寺院もあったという。

 交通機関が不通になった都心では、多くの帰宅困難者が出た。このため東京都は2017年から、東京都宗教連盟と連携し、神社仏閣を受け入れ先とする取り組みを進めている。首都直下地震が起きた場合、都内の帰宅困難者は500万人以上にのぼるとの試算があることから、指定避難所だけでは収容し切れないと踏んだ。

 一方、東日本大震災では宗教者らのボランティア活動も注目された。僧侶や聖職者らが続々と被災地に入り、犠牲者の追悼や炊き出し、がれきの撤去などに当たった。もちろん布教や勧誘が目的ではないことが大前提だった。

 宗教者の災害支援と言えば復旧・復興期の心のケアが注目されがちだが、被災者や行政職員から宗教者が信頼を得られたのは、救援期の活動があったためだということは、見過ごせない。

 東日本大震災以降に相次いだ自然災害でも、宗教者らは着実に経験を積んだ。16年の熊本地震では、真如苑救援ボランティアSeRV(サーブ)が熊本市東区で、天理教災害救援ひのきしん隊が熊本県益城町で、現地の社会福祉協議会と協力し、ボランティアセンターの立ち上げを支援した。

 宗教団体が〝応援社協〟として駆け付け、丁寧かつ迅速にボランティアセンターの運営に当たれることは、他の社会福祉協議会にも伝わっている。人徳のある宗教者らしい応対が、現場の緊迫感を和らげたと評価する声もあるという。

 今回、稲場教授らが発表した調査結果は、宗教者による災害支援が活発になってきたことを裏付けたと言える。

 自治体や社会福祉協議会の中には、政教分離の原則や住民からの苦情を懸念するところもあるだろう。特定の宗教・宗派を優遇したり援助したりすることにはならないと納得させるためには、超宗教・超宗派で活動することや、宗教間で協力すること、布教と勧誘を絶対に行わないことなどを、宗教団体が確約する必要がある。

 異常気象による災害や来るべき南海トラフ巨大地震、首都直下地震への備えは、宗教者や宗教施設の協力なしにはできないのが現状だ。宗教界は万全を期し、襟を正して期待に応えてほしい。(主筆 小野木康雄)

(文化時報2020年3月14日号から再構成)
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