介護者カフェが寺開く 京都・金剛寺

 介護者がつらさや悩みを語り合う「介護者カフェ」を始める浄土宗寺院が増えている。京都市東山区の金剛寺(中村徹信住職)は、コーヒーを味わいながら心をほぐす取り組みを基に、地域に開かれた寺院を目指してきた。2020年度は、宗門による「介護者カフェ」の立ち上げ支援が本格化。さらなる広がりが見込まれることから、金剛寺の活動が先進事例として注目されそうだ。(大橋学修)

介護者カフェを開いている京都・金剛寺の中村徹信住職

 在家出身の中村住職が金剛寺住職に就任したのは06年。どんな公益活動ができるか模索し、当初は写経会など仏教色を前面に出した催しを企画したが、手応えを感じなかったという。

 転機は5年前に訪れた。「お寺で活動したい人がいる」と知人を通じて紹介されたのは、喫茶店のマスター。ミルを使って参加者自身が豆をひき、自分でコーヒーを入れて共に味わう「おてらカフェin金剛寺」を始めた。

 開始は午前7時。参加者らは朝のコーヒータイムを楽しんだ後、木魚体験の別時念仏会を営む。

 さらに、参加者の特技を発表するワークショップの時間も設けている。参加した若者が会員制交流サイト(SNS)で拡散させ、さまざまな人が集まるようになったという。

話しやすい場の力

 介護者カフェを始めたきっかけは、19年1月に宗門が開いた総本山知恩院冬安居道場(教化高等講習会)。下村達郎香念寺住職(東京教区)が講演し、自坊で運営している介護者カフェについて紹介していた。

 お寺でカフェを開くノウハウは、十分に積んでいた。「これならできる」。下村住職から、介護者のケアに詳しい浄土宗総合研究所の東海林良昌研究員を紹介され、宗門の支援を受けることに。同年9月に1回目を開催した。

 金剛寺の介護者カフェでは、介護の専門家を招いて、講演と座談会を行っている。今年今月は新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して中止したが、これまでに4回開いた。

 中村住職は「会館などで行うケアラーズカフェとは異なり、歴史を培った寺が持つ『場の力』が話しやすさにつながっている」と指摘。「介護者はそれぞれ悩みが異なっても、自分1人だけではないのだと思える」と語る。

 浄土宗は、介護者カフェについて「苦に寄り添う活動だからこそ、寺院で行う意義がある」としている。19年度から支援員の派遣を試行しており、金剛寺を含む10カ寺で開設にこぎつけた。
 
 20年度はさらに実施する寺院を増やそうと、立ち上げに対する支援経費を一般会計予算に盛り込んでいる。

 在宅介護をしている介護者は、気持ちを打ち明ける機会や場所が限られている。一方で寺院にとっては、檀信徒が各地に分散する都市部だと特に、地元住民から地域の拠点として認識してもらえない悩みがある。

 中村住職は「朝のカフェと介護者カフェで、人と人をつなぐ触媒の役割を果たせたことで、新たなコミュニティーが形成されてきた」と手応えを感じている。
              ◇
 【用語解説】介護者カフェ
 在宅介護の介護者(ケアラー)らが集まり、悩みや疑問を自由に語り合うことで、分かち合いや情報交換をする場。「ケアラーズカフェ」とも呼ばれる。主にNPO法人や自治体などが行い、孤立を防ぐ活動として注目される。

 【用語解説】別時念仏会(べつじねんぶつえ=浄土宗など)
 時間を特別に設けて念仏をとなえ続ける修行方法。

(文化時報2020年3月21日号から再構成)
(購読のお申し込みは0800-600-2668またはお問い合わせフォーム