【速報】お寺を国有化、年内めど 浄土宗と中国財務局

 宗教法人の解散手続きが進む浄土宗金皇寺(こんこうじ)(島根県大田市)について、境内地などの法人所有資産の国有化が年内に完了する見通しとなったことが8日までに分かった。8月24日付で、中国財務局松江財務事務所が国有化するための条件を提示。鐘楼と山門の撤去は求めた一方、本堂と庫裏は現状のまま国有化する方針を示した。宗は月内に撤去を始め、譲渡に向けた最終手続きに入る。

国有化が決まった金皇寺。山門奥が本堂で、左が鐘楼。庫裏は本堂右の林の中にある

 金皇寺は、檀信徒数減少などによって財務状況が悪化。住職が2013年に死去し、後継者の確保や堂宇の維持が困難と判断した檀信徒約20戸が、15年に宗教法人の解散を決議した。

 しかし、約12万平方㍍に及ぶ土地・建物の処分ができず、解散手続きを進めることができなかった。全日本仏教会の戸松義晴理事長らが、宗教法人法50条3項の「処分されない財産は、国庫に帰属する」を根拠として折衝を進め、財務局から一定の理解が得られた。

 宗は昨年10月25日、寺の責任役員を担う元檀家総代ら5人と協議。林啓碩教区会議長を清算人として手続きを進める方針を確認した。今春には、松江財務事務所に事前協議届を提出。これを受け、松江財務事務所が7月22日、現地調査を行っていた。

 松江財務事務所は、倒壊した場合に周囲に影響を与えかねない鐘楼と山門の撤去を求めたが、本堂と庫裏は倒壊しても問題ないと判断。本堂ごと境内地を引き受け、国有化後も放置することにした。一方で、墓地の処理や境内地の草刈り、庫裏内に残された冷蔵庫などの生活物資の搬出を宗・檀信徒側に求めた。

 宗は8月27、28日に金皇寺で墓地の撥遣(はっけん)式を行い、草刈りを行った。今月中に委託した地元業者が、鐘楼などの撤去や生活物資の搬出などを行う。

【用語解説】撥遣式(はっけんしき=浄土宗)
 一般的に「魂抜き」や「お性根抜き」と呼ばれる法会の浄土宗における正式名称。仏像・菩薩像、曼陀羅(まんだら)、位牌、お墓、石塔など、礼拝の対象となるものを修理・処分する際に行われる。

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