お寺は子ども預かれる? ママ記者が振り返る一斉休校

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、政府が2~3月に小中高校・特別支援学校の一斉休校を要請したのは記憶に新しい。予定外の休校に苦慮する家庭を助けようと、一部のお寺は地域の子どもを預かったが、難しさもあったという。当時小学2年生だった娘がいる本紙記者が対応を振り返った。(磯部五月)

子ども食堂は、子どもが安全に過ごせる場所としても注目を集めている=2020年1月、東本願寺


高額な預かり保育

 小学校の集団登校班で作る会員制交流サイト(SNS)のグループで、2月27日に一斉休校を知った。親同士で不安を共有するメッセージをやりとりしたことを鮮明に覚えている。

 わが家は学童保育の申請要件を満たさず、民間の預かり保育は1日最長10時間で、保険と交通費を含めると約8千円。仮に15日間預けると12万円が必要な上に、学習指導も給食もない。

 休校を前に、子どもが安全に過ごせる場所はないかと探した。子ども食堂などを含めて調べたが、京都市内では見つからなかった。「お寺は、子どもの受け入れ場所になれないのだろうか」。ふと疑問が湧いた。

全国のお寺が対応

 調べると、全国で子どもを預かろうとするお寺が複数あった。浄土真宗本願寺派極楽寺(新潟県小千谷市)の麻田弘潤住職は、研修会講師などの自身の仕事がキャンセルになり、3月4日から自身の子ども3人と一緒に地域の子どもたちを最大10人受け入れた。

 昼食は弁当持参で、お寺の中での過ごし方は自由。周知は公開範囲を限定したSNSで行い、必要以上の責任を負わないよう配慮した。麻田住職は「お坊さんは、生き方やものの見方を説く。何かが起きた時が今なのだとしたら、仏さまの教えを生かすのは今ではないか。お寺が少しでも立ち止まって考える場所になってほしい」と話した。

 浄土真宗本願寺派恩栄寺(石川県加賀市)では、日下賢裕住職が地元の山中温泉街で子どもたちに直接声をかけ、3月2日から顔見知りの小学生5、6人が宿題を持って集まったという。日下住職は「特別なことをしたという意識はない」と振り返る。お寺が子どもたちの日常生活に溶け込む原風景があった。

 一方で、思うように進まなかった寺院もあった。

 日蓮宗廣昌寺(高松市)の大道弘喜住職は「廣昌寺臨時お子さま見守り処」を、ボランティアの須田珠恵さんと共同で3月3日に開設。地元のテレビやラジオに取り上げられ、SNSでシェアされるなど反響はあったが、13日までの正式な利用は2件だったという。

 大道住職は「必要な人に情報が届いていないのか、それとも宗教施設への遠慮があるのか。今後に向けた検討が必要」と総括する。ただ、それでも「喜ばしいきっかけではなかったが、これを機会にお寺が開かれていけばいいと思う」と力を込めた。

 臨済宗妙心寺派東國寺(静岡県藤枝市)は、小学1年生以上の児童を対象とした「自習室」を3月5日に始めた。塚原史方住職が顧問弁護士と相談し、飲食物の提供を控えることなどを決めて開放したが、13日時点で利用者はなかった。塚原住職は「地域の受け皿や助けになればと考え、現実的な受け入れのあり方を模索した。二世帯住宅が多いという地域性もあったかもしれない」と語る。

 お寺と親しく接する普段の取材では忘れがちになるが、一般の人々には宗教施設への入りにくさが、やはりあるのだろうか。

自治体と連携可能

 大谷栄一佛教大学教授(宗教社会学)は「調査に基づいた意見ではない」と前置きした上で、「各お寺が文化活動や社会活動を通じ、布教・伝道以前の日頃の関係性を、地域と深める必要があるのではないか」と指摘する。実際に子どもを預かるかどうかは、「お寺が災害時に避難所となることで自治体と協定を結ぶ例に倣い、市町村レベルで連携できる可能性がある」と分析した。

 文化庁の宗教年鑑によると、2018年時点で全国には寺院が7万7112カ寺ある。新型コロナウイルスが終息し、社会が日常を取り戻すとき、お寺が子どもを預かる取り組みだけでなく、地域の子ども食堂などの社会活動にコミットし、公共性を高めることで、大きな力となる。

 結局、わが家は他県で生活する夫の両親に娘を預かってもらい、3週間離れて暮らすことになった。運良く義父母が助けてくれたが、頼る人がなく、民間に預けるお金もない家庭は、仕事を休まなくてはならず収入が減り、経済的困難に直面したはずだ。

 子育て世帯は家族や会社、周りに「迷惑をかけないように」と、少なからず無理をしながら生きている。1時間でも30分でもいい、子どもが境内の端っこで遊んでいられるような、用事がなくても安心して立ち寄れるようなセーフティーネットとしてのお寺があれば、と実感した。

(文化時報2020年3月28日号から再構成)
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