コロナ禍でも法座開催を ガイドラインで“生命線”守る

 ポータルサイト「浄土真宗の法話案内」を運営する真宗大谷派玄照寺(滋賀県東近江市)の瓜生崇住職が、「新型コロナウイルス感染症拡大防止に配慮した法座開催のガイドライン」を提案した。法座を低リスクで開くための対処法などを高田英明医師と監修。浄土真宗各派で法座の自粛や延期が増加する中、ご法義の“生命線”とも言える法座活動の停滞を防ぐよう呼び掛けている。

本願寺津村別院で開かれた「遇法の集い」。法座における聴聞は浄土真宗の生命線だ=2020年1月29日


 ガイドラインは、ウイルスの感染拡大が飛沫感染と接触感染で起こることから、「飛沫は2㍍程度まで」「密集せず適度に換気し、マスクをつける」と基礎知識を提示。大勢の人が一つの物を触らないようにし、小まめな手洗いが必要だと指摘した。

 参拝者には「風邪のような症状がある人は参加を遠慮する」と注意喚起。トイレの際は利用前と利用後の2回手を洗い、自分用のハンカチやタオルを持参するよう呼び掛けた。

 法座を開く側には、消毒用アルコールの準備やいすの間隔に注意し、「できるだけ触る物を減らすため、ドアマンを用意する」「住職や門徒総代が繰り返し参拝者に消毒などを案内する」などの方策を示した。座談会や食事会については延期することを勧めた。

 浄土真宗各派は伝統的に、法座における「聴聞」を重んじてきた。ガイドラインでは、法座の中止について、韓国の宗教行事で感染拡大が起こった例を挙げ、「寺の行事から感染者が出るリスクを考えると、現段階ではやむを得ない措置」と指摘。一方で、「法座は本来簡単に中止すべきではない。条件によっては、十分に注意して開催できないか」としている。

 瓜生住職は「『止めよう』という意見は当然だが、できることもある」と指摘。「宗教者にできるのは、教えを伝えること。人々が不安を抱える時期だからこそ、役割が問われる。リスクを減らす方策を提示することで、法座開催を後押ししたい」と話している。

 【用語解説】聴聞
 浄土真宗では、阿弥陀如来の救いを「聴聞」することを重んじる。宗祖親鸞聖人は『顕浄土真実教行証文類』(教行信証)の中で、「楽(この)んで世尊の教を聴聞せん」と記し、説明書きとして加えた左訓(さくん)に「ゆるされてきく、信じてきく」と示した。浄土真宗本願寺派と真宗大谷派で「中興の祖」とされる第8代蓮如上人は、『御一代記聞書』で「聴聞にきはまる」と強調。「聴聞」を「後生の一大事」として、現代までその教えが受け継がれている。

(文化時報2020年3月28日号、4月1日号から再構成)
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