「門付け」で月参り 昔ながらで3密避ける

 浄土宗浄福寺(京都市上京区)は、多くの寺院が新型コロナウイルスの感染拡大に配慮して月参りを中止する中、玄関前や庭先で読経する「門付け(かどづけ)」を開始した。菅原好規住職は「法然上人は屋外で布教活動を行っておられた。檀信徒に話すと『昔に戻ったのですね』と安心した顔をみせてくれた。月参りで思い悩む僧侶に知ってもらいたい」と話す。

玄関や庭で読経する「門付け」


 「門付け」は、陰陽師に源流を持つ声聞師(しょうもじ)が、各家の門前で読経や曲舞(くせまい)を行うことで金銭を得た慣習。釈尊の弟子たちは、街を巡る頭陀行(ずだぎょう)を行い、いわゆる鎌倉新仏教の多くの祖師は、辻説法で教えを説いていた歴史を持つ。

 浄福寺では、政府による緊急事態宣言の発令後、年忌法要や月参りの中止・延期を申し入れる檀信徒が増加。外出自粛要請の長期化を感じていた菅原住職は「信仰の基本となる月参りの習慣がなくなれば、身近に話をしながら教化する機会を失うと思い、悩んでいた」と話す。

 4月20日、檀信徒宅へ月参りに移動する道中に「庭や玄関で読経すれば密閉、密集、密接の3密を回避できる」と思いついた。1軒目は庭で、2軒目は玄関で読経。江戸時代以前の僧侶が、野外で布教活動をしていたことを思い浮かべながら称名=用語解説=した。檀信徒も「これなら安心」と喜んだという。

 年忌法要についても、堂外の広縁部分に椅子を並べて3密を回避することにし、全檀信徒に提案することを決めた。多くの人が集まる行事では、動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信することも考えている。菅原住職は「遠方にお住まいで、お寺に参拝しにくい人にお説法を届ける機会になるのではないか」と話す。

 【用語解説】称名(しょうみょう=浄土宗、浄土真宗など)
 念仏をとなえること。浄土教における称名念仏は、「南無阿弥陀仏」の六字名号をとなえる行法のことを言う。

(文化時報2020年5月9日号から再構成)
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