コロナ禍に学ぶ僧侶たち オンライン駆使「Zoom安居」

 新型コロナウイルスの感染拡大に寺院や僧侶がどう向き合うかを考えるオンライン学習会「Zoom安居(あんご) 」が順調に回を重ねている。文化時報紙上セミナー講師の鵜飼秀徳氏もスタッフやパネリストとして参加。僧俗や宗派を問わず、さまざまな切り口で寺院と僧侶の未来を見据えようとしている。

「Zoom安居」に登壇した鵜飼秀徳氏


チャット機能で議論

 「新型コロナウイルスは、人々の生活を大きく変えた。大半は仕事が減り、収入が減少した。それは、信者からお布施を預かる私たち僧侶も同じだ」

 司会を務める浄土宗玄向寺(長野県松本市)の荻須真尚副住職が、テレビ会議システム「Zoom(ズーム)」を通じて参加者らに語り掛けた。7月21日の第3回Zoom安居。「コロナで変容したお布施について」をテーマに、行政書士で葬祭カウンセラーの勝(すぐれ)桂子氏と鵜飼氏が対談した。

 勝氏は、コロナ禍で法事の中止や延期が相次いだことについて「多くの人にとって、供養はイベントにすぎなかった」との見方を示し、鵜飼氏も「これまでの宗教活動に、宗教性は存在していたのか」と疑問を呈した。

 対談の最中にも、チャット機能を使って参加者が質問や意見を入力していく。その中から「オンライン法要はお布施に直結しないのではないか」という意見を、荻須副住職が紹介した。

 勝氏は「法要をやってほしい人は、自分から香典を包む。そもそもお坊さんには、お布施がなければ法要をしないのかと問いたい」と応じ、鵜飼氏は「仏教は伝来して以来、常に最新のツールを駆使して社会をリードし、新しい価値を生み出してきた。それが、戦後からはなぜか古典回帰している」と語り、オンライン法要の導入に対して消極的になることを批判した。

 さらに鵜飼氏は「東日本大震災でも同様のケースが見られたが、コロナ禍で減ったお布施は元に戻らないのではないか」と指摘。一方で勝氏は「気持ちをどれだけ救ったかで、お気持ちの額は決まる。オンラインだからといって安くする必要は全くない」と強調した。

鵜飼氏と対談した勝桂子氏

僧侶の踏ん張り時

 Zoom安居は無料で開催。政府の緊急事態宣言で社会が緊迫していた5月、浄土宗一向寺(栃木県佐野市)の東好章住職が企画し、荻須副住職らに呼び掛けて始まった。趣旨に賛同する僧侶らが続々と申し込み、5月21日の第1回には100人が参加した。

 第2回は6月29日、「コロナ禍における差別問題とグリーフ(悲嘆)ケア」をテーマに行われた。福島第1原発事故を巡り、放射能への不安や福島県民への差別が生じたこととの類似点を探り、「コロナ差別」と言われる状況を読み解こうとした。また、コロナ禍で十分な別れができないまま故人を葬送する遺族へのケアについても考えた。

 荻須副住職は「非常時に寺院が直面した問題は、平常時からあって気付かなかったか、小さなこととして捉えていたものだ」と話す。

 例えば葬儀の簡素化など、以前から「寺離れ」や「宗教離れ」と言われてきた状況は、コロナ禍で加速し、終息後も元に戻らない可能性が高いと考えている。

 荻須副住職は「コロナ禍は、寺院・僧侶の踏ん張り時。いま何をすべきかを考え、実践するための勉強会として、Zoom安居を継続したい」と話している。

(文化時報2020年8月8日号から再構成)
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