宇宙に浮かぶ内陣 ホテル一体型・浄教寺

 改築工事を進めていた京都市中京区の浄土宗浄教寺(光山公毅住職)が7月21日、本尊の開眼と併せて竣工式を営んだ。三井不動産とタイアップし、寺院とホテルを一体化。ホテルは9月28日にグランドオープンした。京都市内では初めてのケースで、古都における寺院復興の事例として注目される。(大橋学修)

48基の灯籠に照らされる内陣

 1323.4平方㍍の敷地に、鉄骨一部鉄筋コンクリート9階地下1階建て延べ6885.41平方㍍を建てた。1階部分に「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」のエントランスと、浄教寺の本堂、寺務所を置く。

 本堂は、光山住職の「古い物を生かし、今の時代に合ったしつらえに」との要望を受け、大西法衣佛具店の大西晋平社長がデザイン。内陣を中央に据えた回廊式で、信州善光寺の戒壇巡りのように、薄暗い空間に光輝く内陣が浮かび上がる。

 内陣は回廊より50㌢ほど高くなっており、旧本堂の柱や梁などを活用。須弥壇(しゅみだん)は以前よりも高さを抑えた。天蓋(てんがい)や幢幡(どうばん)などの荘厳仏具は修理を施し、内陣の周囲に巡らせた48基の灯籠に照らされて、それぞれが輝きを放つ。

 回廊の天井や壁、床は黒を基調に仕上げ、随所に金銀のラメをちりばめた。極楽浄土に至る道程の宇宙空間をイメージしたという。

 平安後期に制作された地蔵菩薩立像や、同寺創建の礎を築いた平重盛の座像を奉安。同寺を菩提寺とする日本南画家、平尾竹霞(ちくか)の作品など、各種の寺宝や建設前の発掘調査で発見された鬼瓦なども展示し、歴史と芸術を感じさせる空間となっている。

持続可能な新手法

 浄教寺がホテルを併設した背景には、観光都市・京都の市街地にある好立地を生かして、持続可能な寺院にしたいという光山住職の決断があった。

 光山住職は、東京都文京区の善雄寺で生まれ育ち、銀行に勤めながら法務を手伝った。浄教寺はかつて叔父が住職を務めていたが、後継者として自分に白羽の矢が立った。

 ただ、堂宇は古く、檀信徒数は約100軒と多くない。京都の市街地に立地する強みを生かして、ホテルにすれば再興できると、銀行勤めで培った経済感覚で考えたという。

 実際に不動産賃貸という新たな収益源を得たことで、堂宇の改築費や寺院運営費の一部を捻出できた。檀信徒の金銭的負担は全くないどころか、護持会費の徴収を廃止したという。

 光山住職は「経済的な独立なくして、教化はあり得ない。100年、200年後を考えた活動をしなければならない」と強調。「浄教寺の手法は、寺院再生の一つの在り方。お寺の文化的な意義を伝えながら、企業体として収益を得る画期的な案件だと感じる」と話す。

浄教寺の歴史を物語る所蔵品を展示した回廊

開かれたお寺に

 「人が集まることでお寺が生きる。お寺をいかに生かすのかが、これからの私たちの仕事ではないか」

 光山住職の考えに基づいて、ホテルの運営を担う三井不動産も、寺院一体型という特色を最大限に生かし、立地だけに頼らないホテルを目指す。

 ロビーには本堂を眺められる窓を設け、館内の調度品にはかつて浄教寺にあった部材を活用。宿泊者が毎朝の勤行に参加し、写経体験などができるプログラムも用意した。「開かれたお寺でありたい」という光山住職の願いを形にした。

 また、本堂の回廊部分に寺宝を展示したのは、檀信徒が浄教寺を誇れるようにするためだという。光山住職は「これまで絵画や墨跡の軸を大切にしすぎて、しまいこんでいた。興味を持つ友人を連れてきてもらえるようなお寺でありたい」と話す。
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 浄教寺に併設する「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」(☎075-354-1131)の総客室数は167室。黒を基調としたデザインで、寺院と一体の雰囲気を醸し出している。JR京都駅前の三井ガーデンホテルに荷物を預ければ、浄教寺のホテルに搬送してくれる「バゲージサービス」(有料)もあり、身軽に京都市内の社寺を巡拝できる。

(文化時報2020年8月22日号から再構成)
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