空き家活用「人の駅」 越前海岸に登場

 過疎化に悩む福井市西部の越前海岸エリアに活気を取り戻そうと、浄土真宗本願寺派善性寺(福井県越前町)の山田靖也住職らが参加する「福井市越前海岸盛り上げ隊」が、空き家を活用した「人の駅」の設置に着手した。イベントや宿泊を通じ、地域住民と訪問者が交流する取り組み。開設に向けたクラウドファンディングでは、約300万円の支援金が寄せられた。

改築される古民家「はりいしゃ」は、鍼灸院として使われていた

 「人の駅」の中心となるのは、「はりいしゃ」の屋号で呼ばれる築50年の空き家。クラウドファンディングで寄せられた資金を元手に改修工事を行い、ギャラリーやイベントスペース、宿泊所を兼ねた交流拠点とする。

 「盛り上げ隊」には、ガラス作家や写真家など多彩なメンバーが集う。山田住職は「クラウドファンディングを通じて、メンバー同士の結束が強まり、コラボレーションにも期待できるようになった。楽しんでもらえるよう工夫したい」と意気込みを語った。

移住者で僧侶だからこそ

 「盛り上げ隊」が活動する福井市越前海岸エリアは、鷹巣、棗(なつめ)、国見、越廼(こしの)、殿下(でんが)の5地域から成る。

 名古屋市出身の山田住職は、2014年に越廼地域へ移り住み、精進料理を提供する古民家レストラン「いただき繕(ぜん)福井越廼」を営んだ。地域の寺で聞いた法話をきっかけに僧侶を志し、16年に得度。空き寺となっていた善性寺を継いだ。「地域の魅力を発信することが、地域で生きる僧侶の役目」と語る。

地域への思いを語る山田靖也住職

 「盛り上げ隊」の発足から間もない2014年頃、隊長を務める長谷川渡さんに加入を勧められた。越前海岸エリアは漁業で成り立つ地域。自身は菜食主義者であり、「できることがあるのか」と戸惑ったが、「地元の人が見過ごしがちな魅力を広めたい」との思いで参加した。

 移住者で僧侶だからこそ、持てる視点があった。「耕作放棄地にはミカンやウメが自生し、空き家は少しの手入れで住める。十分に活用されていない宝物がたくさんある」。地域活性化の鍵は、地域に眠っていると考えた。

 状態の良い空き家や古民家に移住希望者を案内し、地元住民の話を聞く「空き家ツアー」、パンや古道具を販売する「しかうら古民家マーケット」などを、2年前から独自に開催。空き家見学と法話を合わせた「人生探検ツアー」は、「盛り上げ隊」の主な活動の一つにもなっている。

 善性寺周辺の民家は半数近くが無人。「何とか活用できないか」と相談されることも多く、地域を離れる門徒から「使ってほしい」と託されたことが、「空き家ツアー」のきっかけになったという。

 「地域の人に親しく相談していただけるのも、お坊さんという立場だからこそ。独り善がりの喜びではなく、『私もうれしい、みんなもうれしい』を目指したい」。山田住職は力を込めた。(安岡遥)

(文化時報2020年8月26日号から再構成)
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