性的少数者の龍谷大生が語る「他者への優しさ」

 浄土真宗本願寺派の宗門関係学校、龍谷大学で10月23日、学内外に向けたオンライントークイベント「LGBTQ+を語る」が開かれた。文学部臨床心理学科3年の山崎ゆきあさんが、性的少数者の当事者として経験を語り、知識と想像力に基づく「優しさ」の重要性を訴えた。(安岡遥)

当事者の山崎ゆきあさん

 山崎さんは、男女のどちらにも当てはまらない性で、中性・両性・無性など、個人によってさまざまな傾向がある「エックスジェンダー」にあたる。身体的には男性で、精神的には男女の中間である「中性」と、いずれにも属さない「無性」の状態を行き来しているという。「中性の状態では、服装や所作を女性に近づけることで身体の性とのバランスを取るが、無性の状態では男性の身体を受け入れることもできる」と話す。

 “山崎ゆきあ”は通称名で、学内でも使う。「出身地について話すように、セクシュアリティー(性)を語れる世の中を作りたい」との思いから、学内の講演会や会員制交流サイト(SNS)を通して自身の考えを発信してきた。

 2019年は、浄土真宗の精神に基づく学生の活動を大学が支援する「仏教活動奨学生」に応募。より多くの人々に性的少数者の存在を知ってもらうためのラジオ番組の制作などを通して、「学内から学外へ、私の声が届く範囲を少しずつ広げていきたい」と意気込みを語る。

多様性、真に認めて

 山崎さんは、幼い頃から自身のセクシュアリティーに違和感を抱いていたという。趣味や好みが女性に近く、男性として扱われることになじめなかったが、女性としての接し方を望む気持ちもなかった。

 大学の講義をきっかけに、エックスジェンダーという言葉を知り、当事者であることを自覚。「救われた気持ちになった」と振り返る。

 一方で、「言葉や概念を知ることと理解することはイコールではない」と指摘。

 例えば、LGBTの呼称は、女性の同性愛者レズビアン(L)、男性の同性愛者ゲイ(G)、両性愛者バイセクシュアル(B)、身体の性と心の性が異なるトランスジェンダー(T)の頭文字を取っている。

 性的少数者全般を表す意味で使われることもあるが、自分の性別が分からないクエスチョニング(Q)やエックスジェンダーなど、LGBTに含まれないセクシュアリティーの知名度は依然低い。「性的少数者は普通と違う、かわいそうな存在だ」などと誤った認識にもつながりかねず、過剰な配慮を一方的に押し付ける「逆差別」が起きる場合もある。

 こうした問題について、山崎さんは「多様性という言葉が誤って理解され、多様性を認めない姿勢が悪とされてきたことが一因」と分析。「そもそも、差別や偏見は誰の心にもある。問題はそれを外に向け、相手を攻撃することだ」と力を込める。

 その上で、行き過ぎた配慮や特別扱いではなく、正しい知識と相手への想像力に基づく「優しさ」が必要だと強調。「多様性とは、自分と違う存在を『さまざまな人がいる』と受け止めること。他者を完全に理解することは不可能だと知った上でなお、知る努力や想像する努力を続ける必要がある」と、山崎さんは呼び掛けた。

社会の10年先を行く

 自分がどの性に当てはまると感じるか(性自認)、どの性に性的魅力や恋愛感情を覚えるか(性的指向)などに基づいて、男女以外にも多様なセクシュアリティーが存在することが、国内でも近年、広く知られるようになった。

 浄土真宗を建学の精神とする龍谷大学は2016年、性的マイノリティーの現状を把握する目的で、学生と教職員を対象にアンケートを実施。回答者の15%が性的マイノリティーであることを自認し、セクシュアリティーへの無理解な言動にしばしば直面している状況が明らかになった。

 そこで大学は、学生らがセクシュアリティーを理由に差別やハラスメントを受けることなく生活できるよう、人権問題などに取り組む宗教部を中心にさまざまなサポートを展開している。

 宗教部の安食真城課長は「私たちは、ともすれば自分の感覚が『普通』だと思い込みやすい。良かれと思って気を回しすぎ、逆に相手を傷付ける場合がある」と指摘。「何をするにも、まずは当事者の話を聞くことから」として、セクシュアリティーについて気軽に語り合える茶話会や相談室を設けている。

龍谷大学宗教部の安食真城課長

 学生の意見を踏まえた取り組みの一つに、性別や障害の有無などにかかわらず使用できる「だれでもトイレ」がある。「男女別のトイレだけでなく、性自認に応じて選択できるトイレがほしい」との要望をきっかけに「多目的トイレ」から名称を変更し、京都市と大津市の全学舎に計60カ所以上設置されている。

 また、山崎さんのように、戸籍上の名前と異なる通称名で過ごすことを希望する学生も少なくない。将来戸籍名を変更する場合、通称名の使用実績が考慮されることを踏まえて、大学が発行する証明書や出席名簿に通称名を記載できる制度の整備を検討しているという。

 「若い世代が集まる大学は、社会の10年先を行く必要がある。支援を必要とする学生がいつでも気付いてくれるよう、今後も取り組みを発信し続けたい」と、安食課長は展望を語った。

(文化時報2020年11月7日号から再構成)
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