臨床宗教師 85%が活動自粛

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、医療機関や福祉施設でボランティア活動をする臨床宗教師=用語解説=のうち、85%が活動を休止していることが、谷山洋三東北大学大学院准教授(臨床死生学)らの調査で分かった。谷山准教授は、「残念ながら国内ではまだ、臨床宗教師が日常生活に欠かせない『エッセンシャルワーカー』として認められていない」と話している。(安岡遥)

講演中の谷山洋三准教授

 1月13日に龍谷大学大学院実践真宗学研究科が開いたシンポジウム「臨床宗教師研修の闇と光」で明らかにした。谷山准教授は昨年夏、山本佳世子天理医療大学講師と共同で、臨床宗教師らの現状に関するアンケートを実施。日本臨床宗教師会と日本スピリチュアルケア学会の会員104人が、昨年2月以降の活動状況について回答した。

 それによると、医療機関や福祉施設でボランティア活動を行う35人のうち、活動を継続していたのは5人。残り30人は、施設からの要請や自身の判断で活動を自粛していたことが明らかになった。

 また、職員として雇用されている臨床宗教師や医療スタッフへの業務集中を懸念する声や、オンラインや手紙などを通じ、施設外での活動を工夫して続けているとの報告も聞かれた。

 一方、米国では、ボランティアを含む病院付きの聖職者「チャプレン」が、窓越しやオンラインで患者のケアに当たり、医療スタッフらの悩みに耳を傾けているという。谷山准教授は「チャプレンの必要性を社会全体が認めている米国に対し、日本ではまだまだ認識が進んでいない」と話している。

 コロナ禍の影響は、臨床宗教師の養成にも波及。龍谷大学でも、予定していた実習の大半が中止やオンラインでの開催となった。本年度の実習生は昨年秋になってようやく、僧侶が常駐する浄土真宗本願寺派の独立型緩和ケア病棟「あそかビハーラ病院」(京都府城陽市)で、初めての対面実習が実現した。

 こうした状況を踏まえ、谷山准教授は、宗教的ケアの効果を科学的に実証することと、各教団の教義に基づく臨床宗教師の位置付けを確立することを、今後の課題に据える。「少しずつ教団内に理解者を増やし、活動の下支えにつなげたい」と展望を語った。
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【用語解説】臨床宗教師(りんしょうしゅうきょうし=宗教全般)
被災者やがん患者らの悲嘆を和らげる宗教者の専門職。布教や勧誘を行わず傾聴を通じて相手の気持ちに寄り添う。2012年に東北大学大学院で養成が始まり、18年に一般社団法人日本臨床宗教師会の認定資格になった。認定者数は21年3月現在で203人。

(文化時報2021年2月8日号から再構成)
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