重機操る僧侶、古里復旧に奔走

 真言宗豊山派浄光寺(長野県小布施町)の林映寿副住職(45)が代表を務める一般財団法人日本笑顔プロジェクトが、8月の記録的大雨で被災した小布施町の農地復旧を終えた。被害に遭った他の地域を転戦し、地元では重機やバギーの講習を重ねて災害ボランティアの育成にも努める。現地で活動を共にした民間団体や行政と連携の輪も広がっている。(春尾悦子)

浸水した民家の土砂を重機で撤去する日本笑顔プロジェクトのメンバーら=長野県辰野町

3年連続の水害に

 長野県北部を流れる千曲川。小布施町側の右岸では、河川敷の農地で名物のクリやリンゴを栽培している。この一帯が、8月の記録的大雨で3年連続の水害に見舞われた。

 最初の水害は2019(令和元)年10月の台風19号。日本笑顔プロジェクトが発足する契機となった災害だ。重機はあっても操縦できる人が足りなかったことを教訓に活動を始めた。

 今年の大雨で、プロジェクトのメンバーらは8月16日、地元農家の立ち会いの下、千曲川流域を調査。水はなかなか引かず、水没した道路や流れ着いたごみなどが行く手を阻んだ。リンゴの木は水に漬かると細菌が入って腐ってしまうといい、収穫量は激減することが確実に。「またか」。一同は胸を痛めた。

 復旧作業は9月3日に着手。「1カ月はかかるだろう」と言われていたが、延べ70人が参加し、流木や土砂などの撤去を同15日に終えたという。

長野県内でフル稼働

 地元での活動に取り掛かるまで、メンバーらは被災地を転戦していた。

 長野県社会福祉協議会の要請を受け、8月20日、県中部の辰野町で発生した土砂災害の現場に入った。堆積はひどい箇所だと高さ約4メートルになっており、民家にも入り込んでいた。

 8月23~26日に泊まり込みで重機5台をフル稼働させ、家屋の周りにあった土砂を搬出。ダンプカー約200台分にも上った。講習を終えたばかりの3人も、スタッフの指導を受けながら参加した。それでも先が見えない状態が続き、9月になって再度現地入りした。途中から小布施町の現場と掛け持ちになったが、延べ70人以上が参加して7日に任務を完了させた。

 一方で、5日夜には同じく県中部の茅野市で局地的な豪雨が発生。下馬沢川の上流で土石流があり、住宅など64棟が被害を受けた。こちらも県社会福祉協議会の要請を受けて現地入りし、復旧に全力を傾けている。

広がるネットワーク

 災害支援で出会った人たちの中から、協力者が増えている。

 7月には、静岡県熱海市の土石流災害現場で、現地のメンバーらが災害救助犬や犬を扱うハンドラーの後方支援を行った。この経験から、救助犬のボランティア団体と提携。林副住職は「救助現場に向かう救助犬とハンドラーを、ぎりぎりの所までバギーに乗せていき、少しでも負担を減らすのが目的」と話す。

 心掛けているのは「見える活動」。最初は途方に暮れる被災者たちも、大勢のボランティアと重機の威力で見る見るうちに土砂が運び出されていくと、励みになるという。

地元・小布施町の農地復旧は見込みより早く完了した

 3年前の台風19号で被災した人たちは今回、辰野町でも活動した。被災した者同士だからこそ通じ合うものがあったようだ。家屋の状況説明や家財の撤去、リフォームについて自分たちの経験を伝えたところ、住民らは泣きながら、「私たちも頑張ります。頑張らないと」と声を震わせたという。

 土石流災害の現場では、人的被害がなければ自衛隊や消防、警察の出動はなく、復旧はボランティア頼みという現実があるという。「民間だからこそできるスピード感と、連携する皆さんとのチームワークで、災害現場にイノベーションを起こせるよう全力で挑む」。林副住職は語る。

 併せて、こうした災害が今後も毎年続くようであれば、廃業する農家が増えそうだと危惧する。「行政と情報共有しながら、できることがあれば協力していきたい。全国の皆さんも、農作物を買うなど支援できることはある。民間の復旧力を強くして、笑顔を広げたい」と協力を呼び掛けている。

(文化時報2021年9月23日号から再構成)
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