浄土宗 宗勢調査から探る寺院の未来

浄土宗

 

寺院・教区活動の将来考える

宗勢調査から探る寺院の未来

 

全国教区議会議長会は21日、宗勢調査会委員長を務める今岡達雄総合研究所副所長が「第7回宗勢調査集計結果からみる本宗の将来展望」と題して講演する研修を行った。

第7回宗勢調査は、2018年10月1日現在の状況をまとめた統計で、昨年末の『宗報』に調査結果が掲載されている。現在、調査結果を分析し、9~10月には分析結果が宗に報告される。今回、分析の一部が先立って披露され、寺院や教区における教化の方向性を考える内容となった。

全国的に檀信徒数が減少傾向にあるため、寺院や住職の収入が減少している。住職の平均所得は、一般サービス業に従事する人々の平均所得と同等程度であることが分かった。また、施餓鬼などの定期法要の実施状況を見ると、20年間で追善法要や棚経など、いずれも葬儀に関連する法要が増加した一方で、その他の法要が減少しており、浄土宗の教化の中心が葬儀になっていることが分かった。

葬儀件数は全国的に減少傾向だが、例えば過疎地域である石見・鳥取・出雲の3教区は、隣接していても地域によって葬儀件数の増減にバラつきがある。過疎化が葬儀件数減少に拍車をかけているのではなく、むしろ教化の在り方に影響を受けていることも明らかになった。

首都圏などで増加している直葬や中陰の省略などは、将来的に全国的な傾向になることが予測される。また、国内人口の減少とともに就労人口も激減すると見られており、今岡副所長は「将来、家庭環境や宗教観の変化により葬儀が教化の中心ではなくなる」と調査を踏まえて語った。その上で、新しい教化施策の展開が必要であるとし、「我々は、宗や教区に守られた護送船団方式でやってきたため、新しいことに取り組みにくい。しかし、新しい布教方法や法要の勤め方を模倣することも大切」と語り、「より人々に働き掛ける方法を考えなければならない」と要請した。